忍たま

□惹かれはじめ
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「あの〜すみませーん」


聞き慣れた声に、顔を向けると見慣れた黄色が小走りに誰かに駆け寄って行った。


「綺麗な髪ですねー!ちょっと結わせて貰ってもいいかなぁ?」


誰かに話し掛けている黄色…タカ丸さんは、何やら楽しそうに誰かさんと話をしている。

誰だろう、まぁ誰でもいいのだが。

私はタカ丸さんに出会うまで、他人というものには全く興味を抱かなかった。毎日毎日穴を掘って、掘って掘って…。私の考えている世界は己と他。他というものはそれ以上分類されることはない。他は他。それだけだ。己の存在だけはっきりしていればそれでいい。それで充分だ。
そんな私だったが、タカ丸さんに出会ってからだ。私の世界に己と他の他にもう一つ分類が増えたのは。

タカ丸さん…斎藤タカ丸。
最近忍術学園に入学してきた、私より二つ年上の忍術初心者。
髪結いを目指していたが、ひょんな事から、忍者を目指し始めたらしい。そのため、六年ではなく、四年生に編入してきた。
第一印象は何だったか。
あの明るい髪色と、それ以上に明るい笑顔が眩しい人だな。という印象だった気がする。
今まで私に話し掛けてくる人なんて、あまりいなかった。皆、遠くで私を横目に「また穴なんか掘ってるのか」と、呆れた声を漏らしていた。
それに対し、私は別に気にもとめなかった。自分は自分。他は他。他がどう思おうと、自分には全く関係の無いことだ。
そう思って終わり。そうだった。そんな私にタカ丸さんは気軽に声を掛けきた。
特に用はないだろうに、私に構ってくる。始めは慣れない事に戸惑ったり不審に思った。だが、タカ丸さんと話しをすればするほど、誰かといるのも悪くはないなと思えてきた。しかし、それはタカ丸さん限定のもので、タカ丸さん以外の人と話すのはあまり好きではなかった。
そして私の世界は、己と他とタカ丸さんの三つで成り立つようになった。


「タカ丸さん…」


呟いた私の声は、タカ丸さんに届くはずもなく、タカ丸さんは相手に結う許しを得たようで、二人でどこかに向かって歩き出した。私はただ、彼の後ろ姿を見つめるしかできなかった。私に呼び止める権利なんてあるのだろうか。私はまだ彼を呼び止めれる程、彼を知らない。けれどその私より少し大きな背中を止めたくて、止めたくて、そして前みたいに私に笑いかけて欲しくて。堪らなかった。

なぜこんなにタカ丸さんと一緒にいたいのか。なぜこんなにタカ丸さんが自分以外の人と話すのが気に入らないのか。なぜタカ丸さんの事を考えるとドキドキするのか。同時に胸が苦しくなるのか。私には分からないままだった。


「タカ丸さん……っ!」


なぜだか急に、今さっき、タカ丸さんとどこかに行ってしまった人が憎くなってきた。

非常に腹が立つ。

その人に対してだが、自分に対してでもあるような気がする。

私は無意識に、耡を地面に向かって思いきり突き刺していた。

後でアイツを落としてやる!

そして今度は私がタカ丸さんの優しくてとても温かい手で髪を結ってもらうんだ。
そう思うと自然と口元が緩んだ。


end


+++

知り合ったばかりな綾→タカ。
初めて会った時の話なんかも書いてみたいなぁo(^-^)o

独り言な文が大好きです!






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