忍たま

□珍しい委員長
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今日、先輩の様子がおかしい………気がする。






そう顔を寄せ合っているのは体育委員−平滝夜叉丸、次屋三之助、時友四郎兵衛、皆本金吾の四人である。
そんな彼等がちらりちらりと視線をやっている先には、体育委員会委員長、七松小平太が大きな石に腰を下ろしていた。
いつも、いけいけどんどん!と元気有り余りの叫びまくの暴れまくりな委員長なのだが、今日は何だか様子がおかしい。
今日も委員会が始まり、あちこち走り回ったのだが、その後だ。普段と違うのが。先程の元気は何処へやら、急に静かになったかと思えば、はぁぁ、と大きく溜め息。そして空を見上げ頬杖をついて、また溜め息。これの繰り返しなのだ。もはや、「気がする」ではなく、「おかしい」そのものだ。

一体どうしたんだろうか。
珍しい彼の状態を見れば見る程、不思議でならない。


「滝夜叉丸先輩、どうしたのか聞いて来て下さいよ」

「私が!?」


三之助が滝夜叉丸を横目に、言えば、滝夜叉丸は即座に首を横に振った。そして今度は滝夜叉丸が四郎兵衛に視線をやれば逸らされ、四郎兵衛は金吾へ視線をやる。そして同じく、金吾は目を逸らして三之助を見る。これの繰り返しが続いた。

四周目に差し掛かり、金吾が聞きに行く事に決定した。
そろりそろりと、小平太に近付く金吾は、酷く嫌そうな顔をしている。それもそうだ。無理矢理行かされているのだから。
やっとのこと、小平太の隣まで辿り着いた金吾は、恐る恐る口を開いた。


「あっ、あの、七松先輩」

「…ん?何だ?」


先程からずっと空しか映していなかった、丸く大きな瞳に金吾が映る。それを見て金吾は、ごくりと一回唾を飲むと、言葉を続けた。


「………」


無理矢理小平太の元へと行かせた三人は、金吾と小平太の様子を静かに伺っていた。
普段と180度違った行動を取っている人物に近付くなど、怖い外ならない。犠牲者−金吾に心の中で小さく感謝をしながら、目を凝らした。


「金吾、カチカチだな」

「ですね」

「金吾頑張れ〜」


滝夜叉丸、三之助、四郎兵衛の順に一言呟く。視線は二人に向けたまま。


「あ、七松先輩が」

「金吾、抱き着かれてますね〜」

「ぅおー…」


何か短く会話したかと思えば、突然小平太が金吾をぐいと引っ張り、ギュッと抱き着いた。解放したかと思えばわしゃわしゃと、金吾の頭を撫でる。
これらは体育委員会では割とよく見られる光景だ。(小平太との間にだけで)暫くして、金吾がゆっくりと戻ってきた。


「どうだった?」


照れたのか、顔を赤くした金吾に、滝夜叉丸が尋ねると、金吾は眉をハの字にして笑った。


「今日の委員会は、もう終わりだそうです」

「「「…は?」」」


それだけ?
あんなに何かやっていたのに、それだけか?


滝夜叉丸と三之助が口を揃えて言えば、金吾はコクンと頷いた。


「…どうしたのかは、応えてくれませんでした…」



降り出しに戻ってしまった。
先輩を見れば、またぼけーっとしているし…。

滝夜叉丸は肩を落とした。

もういい、私達は帰ろう。

何があったか知らないが、先輩なら自分で解決するだろう。

諦めた、滝夜叉丸と三之助とは逆に、金吾は心配そうに小平太を見つめている。それを見た四郎兵衛もつられて小平太へ視線をやった。




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