忍たま
□久々知兵助の味方
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「三郎次先輩」
「ん?」
自分を呼ぶ声に顔を向けると、同じ火薬委員の二郭伊助が、小走りにこちらに向かって来た。
「なんだ?」
「久々知先輩、どうしたんですか?」
問い掛けと共に、伊助はある一点をちらりと見る。つられて見てみると、そこには暗い空気を体全体から出して落ち込んでいる、火薬委員会(仮)委員長の久々知兵助先輩の姿が。
「タカ丸さんを呼びに行ってから、“ああ”なりましたよね…」
先程、急に委員会が行われる事になり、集合場所に集まった。オレは、久々知先輩から連絡を受けた伊助に呼ばれ、二人で集合場所まで来た。その間、久々知先輩はタカ丸さんを呼びに行ったのだが、タカ丸さんと集合場所にやってきた久々知先輩は、ひどく暗い面持ちだったのだ。伊助の話によれば、連絡をくれた時は普段と変わらぬ調子だったようだ。
「一体どうしたんだろう」
「…オレは大体分かったけど」
「え!?」
オレの言葉に、伊助が直ぐさまオレの顔を見た。その顔には、何で!?教えてくれ!と、書いてある。
「どぉーせ、タカ丸さん絡みだろ」
「そりゃぁ、タカ丸さんを呼びに行ってたんですから……あ」
分かったか?と、軽く投げ掛けると、苦笑いで、「はい、何となく」と返された。
「ねぇねぇ、兵助くん、どうしたのかなぁ?」
突然背後から声がして、振り向くといつの間にか背後にタカ丸さんが立っていた。心配そうに、久々知先輩を見つめている。
「タカ丸さん、久々知先輩がタカ丸を呼びに来た時、タカ丸さんは何してましたか?」
伊助の問い掛けに、タカ丸さんは、ぱちぱちと瞬きをすると、口を開いた。
「えーっと、僕の部屋で綾部くんと休んでた」
「どんな風に?」
続いてオレが問い掛けると、タカ丸さんはまたぱちりと瞬く。
「え?…と、僕は忍たまの友を読んでて、綾部くんは僕の膝に頭を乗せて寝てたよ」
「「それだ」」
見事に、オレと伊助の声がハモった。
「え?な、何??」
何が「それだ」なのか全く分からない様子のタカ丸さんを視界の隅に入れながら、オレと伊助は顔を寄せ合った。
「やっぱり綾部先輩絡みでしたね」
「あぁ、久々知先輩が落ち込んだりしてる時はたいてい綾部先輩絡みだ」
こそこそ話すオレ達に、タカ丸さんは相変わらず、何で?何でー?と、何度もオレ等の顔を交互見ている。
「…先輩を助けるか」
「ですね」
話が終わり、二人同時に、タカ丸さんを見る。タカ丸さんは、「教えてっ」と、両手に握りこぶしを作り、急かすように胸元で縦に振った。
「タカ丸さん、久々知先輩の所に行ってあげて下さい」
「久々知先輩、タカ丸さんと仲良くなりたいけれど、自分からはなかなか話し掛けれなくて、最近ずっと悩んでたんです」
「だから…」
「……兵助くんが、僕と…?」
こくんと大きく頷くオレと伊助を見ると、タカ丸さんは久々知先輩へと視線を向けた。そして再びオレ達に視線を戻すと、静かに、にこりと笑った。
「うん、分かった。僕も兵助くんと仲良くなりたかったから、嬉しいな…。二人共ありがとう!」
大きく手を振り、タカ丸さんは久々知先輩の元へ掛けて行った。遠くで揺れる薄い黄色とその奥にある黒色を眺め、オレと伊助は呟いた。
「「久々知先輩、頑張って」」
久々知先輩の顔色が真っ赤に染まるまで、あと数秒。
end
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