忍たま

□いつか、必ず
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先程まで目の前にいた人物が消えた。何事だと、消えた場所まで駆け寄れば穴が空いていて、そこに落ちたのかと、穴の直ぐ近くまで足を踏み入れた途端、急に目の前が暗くなる。ぶつけた腰を摩り、起き上がってみれば、頭上にはぽっかり穴が開いていて、自分も落とし穴に落ちてしまっていた。


「滝夜叉丸くーーん」


頭上から名を呼ぶ声が聞こえた。


「大丈夫〜〜?」

「大丈夫です。タカ丸さんこそ大丈夫ですかー?」


口の横に両手を翳して、地上へと続く穴に向かって問い返せば、大丈夫〜と、いつものゆるい口調が帰ってきた。声の主、斉藤タカ丸さんは、先程私の目の前で消えた…否、穴に落ちたのだ。それを助けようとした私も穴に落ちたのだが…。

早くタカ丸さんを助けないと…!


思い切り腕を伸ばし、何とか穴から出る事ができた。せっかくの美しい私が、今は砂やら土だらけでとても綺麗とは言えない姿になっていた。まぁ、いつも委員会で今よりひどい有様になるので、差ほど苦痛ではない。
私は慎重に、タカ丸さんが落ちた穴に近付き、覗き込んだ。そこには案の定、タカ丸さんの姿が。タカ丸さんも私と同様、土だらけだ。


「タカ丸さん、捕まって下さい」


急いでタカ丸さんへ腕を伸ばせば、お礼と共に私の手がタカ丸さんの手に握られる。よいしょ、と、力いっぱい引き上げれば、タカ丸さんが穴からひょっこり顔を出した。ゆっくり地上に上がる。


「ありがとう〜滝夜叉丸くん。助かったよ〜」


ぺたりと地面に座り込み、にこりと笑うタカ丸さんが可愛くて、不覚にも照れてしまう。


「いえ、これぐらいどうってことありません」


それより、せっかくの綺麗なタカ丸さんの髪に、土がついて汚れているのが残念で仕様がない。


「せっかくの髪が、台なしです」


控え目に、タカ丸さんの髪に触れれば、苦笑いが返された。


「それよりボクは、滝夜叉丸くんの髪が汚れてるのが、悲しいなぁ」


すると今度は、タカ丸さんが私の髪に触れた。同時に胸が高鳴った。


「タカ丸さん」

「何?」


名を呼べば、タカ丸さんはかくんと首を傾げる。貴方のとる行動、仕草、全てが愛しくて堪らない私は、完全にタカ丸に心を奪われてしまっていると確信できた。


「…すみません。私が穴に気が付いていたら」


貴方がこんなに汚れることもなかったのに


「気にしないで」

「いえ、私は以前約束しました。貴方をお守りする、と」


それなのに私は


「本当に、すみませんでした!」


頭を下げ、謝罪する。私は、自分が惨めで弱くて、悔しくて、堪らなかった。すると私の両手が温かい何かに包まれた。見ればそれは、土だらけの手で、顔を上げれば、その手はタカ丸から伸びていた。


「謝らないで、滝夜叉丸くん」

「しかしっ…」

「滝夜叉丸くんはボクを助けてくれたじゃない」


だから、謝らないでっ


ふわりと、彼は笑った。それはとても優しい微笑みだった。今までこれ程までに優しい笑みを見たことがあっただろうかと、思い返せば、一度もなかった。


「ありがとう、滝夜叉丸くん」


貴方は笑う。こんなに優しく。私に笑ってくれる。
それが、私にどれだけの喜びと幸福感を与えているか、貴方は知らないでしょう。


「…次は、次はこの滝夜叉丸が、貴方を、タカ丸さんをお守りします!必ず!!」


今度は、私がタカ丸さんの手を包み優しくかつ、しっかりと握りしめた。


「うん。お願いね、滝夜叉丸くん」


また笑った。タカ丸さんの笑顔は、花のようだ。綺麗で優しくて温かくて。
するとタカ丸さんが立ち上がった。それにつられて立ち上がる。


「ボクたち、すっかり、汚れちゃったね〜」

「…そうですね」


お互い、見合わせ、笑った。


「お風呂入ってこよっ!滝夜叉丸くん!」

「ぇ………あ、はい!!」


行こー♪なんて、ご機嫌に、私の手を引いて歩きだすタカ丸さん。


タ、タカ丸さんと二人きりでお風呂…!?


手を引かれながら、タカ丸さんの少し後ろで、気付かれないように、小さく悶えながら、心の中で声に成らない声を上げた。




私は無事、(ある意味)生きて帰ってこれるだろうか。




end



+++
私の中で基本攻めはヘタレでどうしようもないです。なので自然と片想いに(嘆。
というか、これ滝でもなんでもない・・・状態ですよね、すみません(滝が書けません!)

嗚呼、滝タカが書きたいッ!!





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