忍たま

□ほら、もう寒くない
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待ち合わせ場所に向かう途中、空が曇りだし、ぽつ、と、水滴が、私の鼻の頭落ちてきた。それを合図に、一気に水滴が降ってきて、容赦なく私と地面をたたき付ける。私は目的地まで全速力で走った。

暫くすると、目的地が見えてきた。それは、この辺りに一本しか生えていない、大きな木。よく友達とあの木の下で昼寝をしたりしている、私と友達との間ではお気に入りとされている場所だ。私は急いでその木の下に駆け込んだ。
結構な距離を走ったせいで、呼吸が乱れ、肩で息をする。膝に手を付き、息を整えようとしている私の耳に、雨の音以外の音が入ってきた。


「乱太郎っ!大丈夫か?!」


聞き慣れた声に、顔を上げる。


「団蔵っ」


目の前にいたのは、今日、この場所で待ち合わせた相手―加藤団蔵だった。雨が降り出す前に来ていたのだろう。団蔵の着物は濡れていない。それに比べて自分を見れば、全身びしょ濡れで、髪も着物も肌にぺっとり張り付いている。ぽたぽたと、裾から水滴が足場を濡らしていった。


「ごめんね、遅くなって…」


そう言うのと同時に、団蔵の手がこちらに向かって伸びてきて、私の額に張り付いている前髪をそっと掻き分けた。


「そんな事よりこのままじゃ風邪引くぞっ」


団蔵の言葉に、確かにそうだ、と同感した。袖を絞れば、更に水滴が地面に落ちる。


「っ…くしゅんっ!」


くしゃみをすると、急に寒くなり、一瞬にして体がひんやりと冷たくなった。手と手を結べば、指先から冷たさが伝わってくる。すると、微かに震える指が、別の指に包まれた。顔を上げれば、目が合った。


「このままじゃ、本当に風邪引いちゃうな…」


呟き、視線を私から空に移す団蔵に、私もつられて顔を上げた。空は相変わらず薄暗く、雨は激しさを増すばかりで、晴れる気配など全くない。


「帰るにしても、ここから忍術学園まで結構距離あるしなぁ〜」


う〜〜、と両腕を組み、唸る団蔵を視界の端に映し、泣き続けている空をぼーっと眺めた。少しして、団蔵に動きがあった。顔を向ければ、団蔵は、雨宿り中の木の根元に腰を下ろしていて、その目はしっかりと、私を捉えている。
何?と、目で応えれば、乱太郎も来いよ、と言われた。私は言われた通り、団蔵の隣へと足を運ぶ。そして腰を下ろそうとした時、ぐい、と引っ張られ、団蔵の両足の間に尻餅を着いた。


「っ?!団蔵??」


団蔵に背を向けた状態で名を呼べば、腰辺りから団蔵の手が伸びてきて、ぎゅうっと、抱きしめられた。温かさが冷えた私の体を包むみ、同時に顔が一瞬にして熱くなる。


「だっ、団蔵!?」

「あったかいか?乱太郎」


そう言い、私の首筋に顔を埋めてくる。


「あったかいけどっ…」


私の言葉に、けど?と、団蔵は、私の顔を覗き込み、問い掛ける。その際に、さらりと揺れた紺藍の髪が、私の耳擦れ、擽ったさに、思わず身をよじった。


「…団蔵が、濡れちゃうよ」


恥ずかしさに、小さく声にすると、団蔵が耳元で笑ったように感じた。


「オレは、乱太郎がよければそれでいいんだよ」


乱太郎優先っ。なんてはっきり言い切る団蔵に、私の顔の熱が更に上がっていく。
冷え切っていた私の体は、団蔵の体温のお陰か、恥ずかしさ故か、すっかり温かくなっていた。丁度良い温かさに、団蔵に体を預け、静かに瞼を下ろした。







次に目にしたのは、青々と澄んだ綺麗な青空。






end




+++

初、乱太郎受け話にて団乱。
団乱大好きなんですッ!
次はきり丸とか兵太夫も登場させたいなぁ…(^∪^)

小学生の恋愛って、可愛いよねw






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