忍たま

□珍しい委員長
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すると、遠くから軽い足音がこちらに近付いてきた。


「七松先輩ー!」

「ん?」


自分の呼ぶ声に顔をやれば、そこには小走りに、こちらに向かってくる摂津のきり丸の姿が。
金吾と四郎兵衛も、小平太同様、きり丸へと視線を向ける。諦め帰ろうとしていた滝夜叉丸と三之助も、足を止め、皆と同じ方へ視線をやった。


「何だ?きり丸」


きり丸が近くまで来た所で返事をすると、きり丸はニカッと笑った。


「先輩、伝言です」


きり丸の言葉に、一回ぱちりと瞬きする小平太の耳元にきり丸がこそこそと、周りには聞こえないように伝言を伝えた。伝え終わり、小平太の耳元から顔を離すと、きり丸は再びニカッと笑って、よかったッスね!と、一言。

一体何がよかったンだ?

二人を見つめていた全員が、心の中で呟いたのと同時に、小平太が動いた。それに一同がビクリと驚く。小平太の顔は先程の、ぼけーっとしていたのとは違って、いつもの明るい顔付きに戻っていた。否、いつも以上に輝いてみえる。すると小平太は、きり丸に一言元気よく礼を言うと、ビュンと、勢いよくきり丸が来た方へと走って行ってしまった。


「きり丸!」

「んぁ?何?」


小平太の背中を見送っていたきり丸に、金吾が駆け寄る。


「七松先輩、どうしたの?」

「え?あぁ、さっきの伝言か?」

「何だったんだ?」

「何、何?」


金吾が尋ねると周りにいた全員が、きり丸に駆け寄ってきた。いきなり囲まれ、きり丸は、一体何なんすか!?と、戸惑う。


「先に質問したのはこちらだ!」

「何だったの?きり丸」

「教えて、教えて」

「誰からの伝言なの?」


突然囲まれた上に、質問の嵐。きり丸はとりあえず落ち着いて下さい!と、声を上げる。


「伝言は不破先輩からっすよ」

「「「「不破先輩ぃ!?」」」」


不破先輩と七松先輩。一体どういう関わりがあるのだろうか。一同は一斉に眉間に皺を寄せ、首を傾げた。


「で、不破先輩が何って?」


早く知りたくて答えを急かす体育委員の面々に、きり丸は、小さく溜め息を着くと口を開いた。たが、口にした言葉は答えではなく…。


「それは…、自分の目で確かめて下さい」


ニィッと、意地悪な笑みを浮かべたかと思えば、オレ、図書当番の途中だからとか、一言呟き、スタスタと持ち場に戻って行ってしまった。


「ちょっ!きり丸!!」


金吾の呼びかけも虚しく、きり丸の姿は消えてしまった。

これでは又しても何も進歩がない。降り出しに戻ったぁ〜っ!

そう溜め息を着く滝夜叉丸を、三之助が否定する。


「不破先輩に聞けばいいンじゃないんですか?」

「そうですね!」


三之助の言葉に金吾が同意する。四郎兵衛も黙って大きく頷いた。


「よし!不破先輩を捜しに行こう!」


口々に言えば走り出した。向かうは図書室!不破先輩もきり丸と同じく図書委員だ。もしかしたら図書室にいるかもしれない!

四人はバタバタと、図書室へと続く廊下を走る。
暫くして図書室に辿り着き、ゆっくり戸を開けた。
開けたのは金吾。その金吾は戸を開けると、中に入る事なく、出入口で立ち止まったまま、動こうとせず、ただ一点を見つめていた。
どうした?と、金吾の顔を覗き見てから、金吾が見ている方へ視線をやった滝夜叉丸も、金吾と同じく、固まってしまった。続いて三之助も、四郎兵衛も。


「何してるの?」

「「「「!?」」」」


突然声を掛けられ、四人はビクリと小さく跳ねた。


「ふ、不破せんぱ…「静かにっ」


大声を上げかけた、金吾の口に雷蔵は人差し指をピンと立て、静止させる。
そして、四人を廊下に出すと、静かに戸を閉めた。

驚いた表情をしている四人に、雷蔵は小さく笑う。


「今は図書室、入室禁止、だね」


そっとしてあげようね。


そう優しい声色で話す雷蔵に、四人は、静かに頷いた。









「あの、不破先輩」

「何だい?」


図書室を離れ、行く宛てもなく歩いている雷蔵と体育委員四人。そんな中、金吾が小さく雷蔵に話し掛けた。


「えと、七松先輩…は、その」

「あぁ、皆は七松先輩の事が気になって来たんだね?」

「はぃ…」


小さく俯く四人に、雷蔵は、七松先輩は好かれてるなぁと、微笑んだ。


「さっき、中在家先輩が、任務から帰って来たんだ」

「任務から?」

「うん。珍しくも、かなり危険な任務だったみたいだよ」

「へぇ…」


だから。…だから、先輩は心配であんな風に…?


「あとね、よく知らないンだけど、任務に行く前に二人の間に何かあったみたい」

「何かって?」


雷蔵の言葉に、四人は一斉に雷蔵の顔を見る。すると雷蔵は、さぁ、と、苦笑いを返した。


「…喧嘩でもしてたんですかね」


ぽつりと呟く滝夜叉丸に、皆は静かに同意した。

頭に過ぎるのは、先程、図書室の出入口で見た光景。



…本を手に、胡座をかいている長次の背にくっついている小平太の姿。いつも誰かに抱き着いたりするので、別に気にならない光景だ。



−…でも、今日の、中在家先輩にしがみ付いていた先輩の背中は、どこか、淋しそうだったんだ…





「今日は、委員長の意外な一面が見れましたね」


先程から黙って付いて来ていた四郎兵衛が、少し淋しそうに微笑み言うと、つられて三人も微笑んだ。

そんな体育委員を後ろから眺め、耳を傾けていた雷蔵も、小さく微笑んだ。










翌日、委員会活動として裏々山を登ったり下りたり登ったり下りたりを100回繰り返す事になった。
昨日の小平太の姿は何処へやら。元気いっぱいに、いっけいっけどんどーん♪と、声を弾ませ山を駆け回る委員長の姿に、体育委員の皆は、顔を見合わせ笑った。



が、しかし。



「な、七松先輩は!?」

「見失いましたぁ〜」

「またかぁああああ!!」


たまには、大人しい先輩でいてほしいかもしれない、と、日が沈み始めた、薄暗い山の中で叫び声が上がった。




end




+++

色々とお初な事が多いお話に。
口調が分からないOTL←

ちょろっと長こへっぽいものが入ってしまった(>_<)
体育委員会は火薬委員会の次に好きですw




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