忍たま

□ゆっくり、咲かせましょう
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一人で過ごしていた時の、暗い空気は何処へ言ってしまったのだろうか。胸の奥の方がじぃんと、温かくて、何だか歯痒い。目の前で、未だ頬を染め、ぷっくら頬を膨らませて俯いている斉藤が愛しくて愛しくて堪らない。触れたい。
そう思って自然に斉藤へと伸びた手は、斉藤の柔らかな頬に優しく触れた。ゆっくりと顔を上げる斉藤の瞳に、オレが映る。途端に頬が熱くなって、鼓動がはやくなっていった。


どっくん、どっくん。


今のオレの中で、心音が五月蝿く鳴り響いている。斉藤に聞こえてるんじゃないかと思う程五月蝿い。


「……へーすけくん?」


斉藤の唇が小さく動き、オレの名を呼ぶ。ハッとして、オレは反射的に斉藤から手を離した。離れ際、斉藤の体温が名残惜しく思った。


「ご、ごめんっ!つい…」


かぁああ、と、更に顔の熱が上がる。俯いて斉藤を見れば、顔が赤いまま、こちらを見つめていた。少し、淋しそうに見えたのは気のせいだろうか。


「せ、…口吸いされるかと思った」


小さくそう言って俯く斉藤とは対象的に、オレは直ぐに顔を上げた。


え?……く、くく口吸い?!


ボンッと、音が出る程の勢いで更に顔の熱は急上昇。思い返せば、オレは斉藤と恋人と言う仲になったのだが、一度もしたことがない。否、今日まで生きてきて一度もない。


「…いいのか?」


ゆっくり問い掛ければ、斉藤は小さく頷いた。


「うん…兵助くんなら」


恥ずかしそうに口にする斉藤に、体の奥から何かが沸き上がって来るのを感じた。先程より鼓動は五月蝿いし、身体は熱い。軽く眩暈までしてきたみたいだ。


触れたい。斉藤に触れたい。


再び斉藤の頬に触れる。ゆっくり顔を上げさせれば、斉藤は静かに瞳を閉じた。長い睫毛が目に入り、次に唇に視線がいった。綺麗な桃色をしたそれはふっくらしていて、すごく柔らかそうだ。そして優しく、それに口付けた。



柔らかくて、すごく、甘かった。




「…斉藤」

「…ん?」


唇を離して、鼻と鼻が擦れる程の距離で声を掛ける。


「…ここに来る前、団子でも食ったか?」


そう問えば、食べてないよ?、と、何でそんな事を聞くのだろうと言う目で見つめられた。


「…すごく、甘かったから」

「えっ」


てっきり食べた後だと…と、呟けば、斉藤はまた恥ずかしそうに眉をはの字にした。


「あと、すごく柔らかかった」

「…っ!……って、うぁっ!?」


もう一度、と、思えば身体が勝手に動く。斉藤の腰に手をやり、ゆっくり押し倒した。さらり、と、床に落ち色素の薄い髪に、結う途中でまとめていない自分の髪が被さる。きゅっと閉ざされた瞳に唇を落とし、目尻も額も頬にも、優しく唇で触れる。


「兵助くん…」


斉藤の声に、斉藤の顔から顔を離せば、目が合う。何だ?と、見つめてみれば、静かに微笑む斉藤。


「兵助くん、大好き」


斉藤の声が耳に届いて直ぐ、唇にまた柔らかな感触。それは先程感じたのと同じ感触だ。
ぱちぱちと数回瞬き。目の前には、はにかみ笑う愛しい人。



あぁ、なんて、オレは、




「幸せ過ぎて死にそうだ」


少し眉を下げて笑うオレに、斉藤も「僕も」と言って笑った。





問題用紙の空白を埋めるのには、まだまだ時間がかかりそうだ。





end




+++

今まで、生まれて初めてこんなに両想いな小説書きました←

ヘタレで恥ずかしがり屋なので、こんなんで書いてて恥ずかしくて堪らなかった←←

そういえば好きになったCPで、天然×天然って、初めてのパターンだ!(笑。

色々とお初なことばかりなくくタカでした(^O^)



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