お題UP
□我が子のような君へ
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「タカ丸さんっタカ丸さんっ!」
弾けるように名を呼ばれ、タカ丸は声がする方へ振り向いた。
「なぁに?伊助くん」
「あっちに綿菓子売ってますよ!」
「あ!本当だっ!久々知くん、行ってきまーす!」
目的の物を目で捉えると、小走りに、二人――二郭伊助と斉藤タカ丸は、仲良く手を繋いで行ってしまった。久々知兵助と池田三郎次は、その背を見送る。
只今、火薬委員会御一行は、祭りに来ている。いつもなら、同級生と行くのだが、今回は珍しくも委員会のメンバーでの参加となった。
「楽しそうですね」
「あぁ」
見つめる先には、楽しげに目的の綿菓子を手に、笑い合う、後輩と年上の後輩の姿があり、兵助は目を細めた。
「皆でお祭り行こうよぉ〜!」
始まりはタカ丸の言葉。放課後、委員会活動の、火薬壷の整理を終えた所で、タカ丸が口を開いた。聞いた瞬間、一同は、ぱちくり瞬き。今までに、委員会のメンバーで余暇を過ごしたことなど、一度もなかった。タカ丸のお誘いに、それも、いいかも知れない、とその言葉に乗り、今に至る。
「どっちが下級生か、分からないな」
小さく笑いながら、三郎次とタカ丸を交互に見て兵助が呟く。それを見て、三郎次も小さく笑った。
「へーすけくーん!三郎次くーんんぐぐ、っ」
呼ぶ声に振り向くと、そこには人込みの中から、見慣れた細い腕が空を掻いていた。
「タカ丸さんたちが人込みに飲み込まれてますよっ!?」
「ったく〜…っ」
急いで、二人は助けに向かう。人込みを掻き分け、思いきり伸ばした兵助の手は、タカ丸の腕を掴む。そして屋台裏に向かって思いきり引っ張った。ずるりと、人込みから薄い黄色が顔をだし、兵助に握られていない方の手には、しっかりと、小さな手が握られている。タカ丸、伊助の順で助け出された。
「あ、ありがとう〜」
てへへ、と笑いながら礼を言うタカ丸に、兵助と三郎次は、小さく溜め息をついた。
「また迷子になられたら堪らないからなぁ…」
そう、兵助の言葉通り、タカ丸は本日二回も迷子になっていた。少し目を離せば、姿を消すし、先程の様に、人の波に流されてしまう。犬じゃないが、紐を付けた方がいい。目の前でふわふわ笑っている人物は、犬りよ厄介かもしれないと、兵助はまた、溜め息をついた。それに、同情するように、三郎次と伊助は苦笑いを零す。
「…ごめんね、迷惑かけちゃって…」
先程まで笑っていたかと思えば、しゅんと俯くタカ丸に、三人は顔を見合わせる。本人は悪気はないのだ。慌てて、伊助がタカ丸の袖を小さく引っ張り、気にしないで下さいっ、と、元気付ける。そうですよっ、と、三郎次も続けた。
「ありがとう、二人共…」
ふわりと笑うタカ丸に、つられて伊助と三郎次も頬を染め、笑む。
「そうだ、手を繋げばいいんじゃないですか?」
ふと、伊助が提案し、タカ丸はそうだね!と、目を輝かせた。そして、伊助と手を繋ぐ。
「ほら、先輩も」
「ぁ…え??」
小さく兵助に耳打ちする三郎次に、兵助は何でと言った顔をした。
「タカ丸さんと、手を繋いで下さい」
伊助じゃ、また人込みに流されちゃいます、と兵助の瞳を真っ直ぐ見た。
「…そ、そうだな、ほら手、」
「あ、ありがとう、兵助くん」
差し出した手を、躊躇なく、タカ丸は繋ぐ。嬉しそうに笑うタカ丸に、兵助はうっすら頬を染めた。
「よーしっ!また屋台回ってこよーっ♪」
元気な掛け声に、今度は手を繋いで、火薬委員会御一行は、人波に足を踏み入れた。
end
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あれ、なんか、うん、書きたかった内容から思いきり反れててしまった(>_<)
仲良し火薬一家(笑。
さりげ?に、三郎次は手を繋いでいない(¨;)