お題UP

□我が子のような君へ
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ある晴れた日の事。


今日の委員会活動は、お馴染みとなった、マラソン。今回は、裏裏裏山から学園までを全力で往復する。そんなのが十回程続き、我等が委員長、七松小平太先輩以外全員が、体力の限界を迎えていた。次屋先輩は、またどこかに行っちゃって、滝夜叉丸先輩は諦めて座り込んでしまって、時友先輩は力尽き、先程道端に倒れてしまった。僕はというと、とっくに力尽きた体を引きずり、七松先輩が走り去った道を、一歩一歩、ゆっくりと進んでいる。今には、そのたった一歩が重くて苦しくて。僕は下唇を噛みながら、疲労と痛みに耐えていた。
しばらく進んだ所で、くらくらと安定しない視界の隅に、随分と前に僕達の前を走り抜けて行った、ふさふさした茶色い髪が映り、それを凝視すれば、やはり七松小平太が、木にもたれ座っていた。


「やっと追い付いた…」


小さく呟いた言葉は、確かに声に出したはずなのに、音がなかった。ゆっくりゆっくり、七松先輩のもとへ足を運ぶ。もう少しという所で、足を滑らせ地面に落ちた。その際にぶつけた顎だとか腕は痛かったけれど、それに反応する力は残ってはいないので、そのままじっと、地面に体を預け、目を閉じた。


「…ん?金吾…?」


頭上から聞き慣れた声がして、視線だけ、そちらに向ければ、片目を擦りながら、僕を見下ろしている。先程昼寝でもしていのだろう。


「滝夜叉丸たちはまだなのか…」


ぽつりと呟き、まだ目を擦っている。僕は小さく、はいと答えた。


「金吾も来い、気持ちいいぞ」


その声と共に腕が伸ばされ、ひょいと持ち上げられたかと思えば、七松先輩の膝の上。木の葉の隙間から差し込み陽の光が眩しくて、反射的に目を細めた。するとすぐそこから、大きな欠伸が聞こえてきて、見れば、うとうとと、今にも寝てしまいそうな顔が。すると、おやすみー、と小さく聞こえたかと思えば、僕に回している腕に力が込め、七松先輩は僕の肩に顔を埋めてしまった。
恥ずかしさかなにか、頬が熱くなるのを感じ、冷まそうと両頬に手の平をあてる。じんと、頬の熱が手に伝わって、手も段々熱くなってきた。小さく風が吹けば、すぐ近くにある茶色い髪が僕の頬を撫で、同時に七松先輩の匂いがする。それはなんというか、今日の様な暖かい日にひなたぼっこしていた時の匂いに似ていた。…上手く表現できないや。ちらりと、彼の顔を覗き見てみれば、いつものくりくりとした大きな瞳は閉じられていて、薄く開いた唇からは規則正しい寝息が繰り返されている。一瞬、ドキッと心臓が大きく脈を打った。気ににせず胸に手をあて、まじまじと見て見れば、結構綺麗な顔をしている。よく、立花先輩が綺麗だとか聞くけれど、僕達の委員長だって負けてないんじゃないかな?否、綺麗というより、男の人に言うのはおかしいかもしれないけれど、可愛い。他の六年生の先輩と比べて、幼さが残った顔をしていて、毎日顔も体も土だらけの砂だらけで、はしゃぎ回っている七松先輩は、幼い子を見ている時と同じ感じがするんだ。僕だってまだ、七松先輩からみれば、幼い子だって思われるかもしれないけど、七松先輩だって行動は僕たちと同じ様なものだ。
なのにやっぱり、五年という歳の差は大きくて、今、僕を抱きしめている手に、自分の手をそっとのせてみたら、一回りも二回りも違う大きさ。途端、自分の中から何か分からない感情が胸辺りから沸き上がってきた。何だろう。強いて表すなら、悔しい?
最近これだ、七松先輩といると、よく分からない感情が沸き上がってきて、胸が苦しくなるんだ。
気付けば目頭が熱くなって、涙が込み上げてきた。泣いてたまるかと、空を仰いだ。相変わらず、陽射しが眩しい。
何と無く、再び近くで夢の世界に旅立っている顔を体をねじって、覗き見た。幸せそうな寝顔、すごく安心しきった顔があって、更に僕の鼓動が早くなる。
今もだけど、僕は一年生だからか、よく七松先輩に抱きしめられる。恥ずかしいけれど、すごく、すごく嬉しい。でもその感情の後に少し苦しくなるんだ。


――僕も抱きしめたいな…。


頭に過ぎる思いに、正直、何を考えてるんだと、思ったが、やっぱり、そう思ってるんだ。本心が。
僕が彼みたいにやっても、抱きしめと言うより、抱き着いている形になってしまう。

僕は、自分の両手に視線を落とし、ギュッと痛い程握った。


早く、心も体も大きくなって、彼を…。



自分を抱きしめ、眠る彼にゆっくり腕を回した。




今はまだ、“抱き着く”でも、いいや



いつか必ず






この腕に抱く








(大分かかりますが、僕のこの腕で抱きしめてみせます、貴方を)







+++

何と言うくだくだ文\^o^/
あんまり言ってないんですが、好きなんですよ、金こへw
だから一度、金→こへ書いてみたかったので、相変わらずの駄文だけれど、書けれて嬉しい(^O^)




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