頂き物

□今はこんなに
1ページ/3ページ


――ザワ

風が吹けば木々の葉を揺らす。舞い上がった風を同時にうわ!と声も上がった。乱れた髪形を正しながら、少年は空を見上げる。
緑色の葉の間から見える人工でいて美しい空は、彼らにとっては本物の空だ。
その色に目を細め、そのまま目を閉じる。

「キーラー」
「んー?」

声の主は上から覆いかぶさるように、木の根元に座り今にも夢の世界に旅立とうとする友人に告げた。

「起きろ」
「えー折角いい天気なのに」
「えー、じゃない。ほら!」

差し出した手に、渋々といった形で手を重ねればグイっと引き起こされ立たされる。

「乱暴だなー」
「こんなとこでサボってるからだろ?」
「だって、訓練面白くないんだもん」
「お前な…」

脱力するしかない。気持ちが見えるくらい肩を落とせば、疲れてるの?と聞くキラに、誰のせいだ?と問い返してやりたいが返ってくる言葉は決まっているだろうし、もうある意味、日常茶飯事なことに諦めが先にきた。
チラリと隣を伺えば、どうしたの?と覗き込んでくる紫色の瞳。
なんでもないよ、と言葉にはせず覗き返せば伝わったのか、ふわりと笑顔を返される。

「クスクス、アスランだなー」

何を指して呼んだ名前なのか分からないが、それだけで良かった。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ