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□届くことのないラブレター
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いい?
これは君にだけ教えるおまじないだよ。
二人だけのひみつのおまじない。






 【届くことのないラブレター】






こうなることを予想しなかったといえば嘘になる。
最悪の事態を予測し行動する事は、性格の問題ではなく訓練や経験により叩き込まれたものであり、もはや習性のようなものになりつつある。
だからこそ、その可能性から目を背けてしまった自分が恨めしかった。


「キラ……」


アスランは目の前で眠る愛しい人の名前を呼び、グッと拳を握った。

共闘するようになって気付いた事がある。
キラはキラのままだったという事だ。
大人びた眼差しを向け、落ち着いた口調で問い掛けてくるキラは、ただの学生だった頃の彼を知っている者たちからすれば確かに変わったようにも思える。
でも、アスランにはその意思の強さも自分より他人を思う優しさも変わらず映る。
そうだ。キラの根本は変わっていない。

それが分かっていながら、何故これには気付かなかったのか。
優しいキラがアスランを気遣って隠していること。
たとえ、アスラン本人にそれを問い質されたとしてもキラは白を切るだろう。
なぜなら、誰も知らないのだから。カガリもラクスさえも。



「キラは本当に、頑固でお人好しだな」







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