俺の上司様
□俺の上司様。第五話
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あんな顔をしておいて、何を根拠に大丈夫だというのだろう。
寂しい。
会いたい。
そう言っているじゃないか。
『あいつは、泣き虫で甘ったれで…』
シンがキラに付く前。元・上司に聞かされた話。
あの時はただの惚気にしか聞こえなかったが、今なら少し分かる気がする。
意地っ張り。
強がっているだけなんじゃないか、あの上司は?
大切な人に会いたいのは皆一緒のはずなのに。
自分のことより、他人を優先する。
分かっていたはずなのだ。キラがプラントに来たその日、あの場面を見た時から。
だからこそ、シンはキラに付いていくことを決めたのだし。
(あぁ、もう!どうしてあの人は…!!)
居ても立ってもいられず、取り敢えず端末がある場所へとシンが歩きだした時だった。
前方に見知った姿。
その人物を認めて、シンは道を開け、礼をする。
「…待ってますよ」
「ああ、知ってる」
すれ違う際に交わした言葉。
やっぱり惚気られてる、と確信しながらも、シンはそのまま帰路へついた。
――どうか、あなたも幸せであってほしい。
END