俺の上司様

□俺の上司様。第五話
2ページ/5ページ




あんな顔をしておいて、何を根拠に大丈夫だというのだろう。


寂しい。

会いたい。


そう言っているじゃないか。


『あいつは、泣き虫で甘ったれで…』


シンがキラに付く前。元・上司に聞かされた話。
あの時はただの惚気にしか聞こえなかったが、今なら少し分かる気がする。


意地っ張り。


強がっているだけなんじゃないか、あの上司は?

大切な人に会いたいのは皆一緒のはずなのに。

自分のことより、他人を優先する。



分かっていたはずなのだ。キラがプラントに来たその日、あの場面を見た時から。

だからこそ、シンはキラに付いていくことを決めたのだし。


(あぁ、もう!どうしてあの人は…!!)


居ても立ってもいられず、取り敢えず端末がある場所へとシンが歩きだした時だった。


前方に見知った姿。

その人物を認めて、シンは道を開け、礼をする。



「…待ってますよ」


「ああ、知ってる」



すれ違う際に交わした言葉。

やっぱり惚気られてる、と確信しながらも、シンはそのまま帰路へついた。









――どうか、あなたも幸せであってほしい。





END
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ