俺の上司様
□俺の上司様。第五話
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「大丈夫、大丈夫だよ…」
一人になった執務室。
ドアが閉まった後も、キラはまるで自分に言い聞かせるようにその言葉を繰り返した。
【雪の降る夜に】
部屋の明かりを落として、窓辺の椅子に腰を掛ける。
少し寒いと思っていたら、雪が静かに降りだしていた。
街灯とそれに照らされる雪は、何とも幻想的で。
こんな夜に、恋人と過ごせたら素敵なのに…と思ってしまう。そんな乙女チックな思考にキラは自嘲するように口元を弛ませた。
同時に、さっきまで大丈夫だと思っていたのにも関わらず、もう寂しいなんて思ってしまっている自分にも。
(クリスマスだから、かな?)
こんなに弱くなってしまうのは。
愛しい人に会いたくなってしまうのは。
しんしんと降る雪。
気候が調節できるプラントで雪が降るなんて。
これもクリスマスだから?
だとしたら、ちょっとしたクリスマスプレゼントかな?
愛しい人への想いをこんなに深くできるから。
(大好き……会いたいよ)
ぽろり、と涙が零れた。
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