俺の上司様
□俺の上司様。第五話
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「また俺がいない所で泣いてる」
背後から掛けられた言葉にキラはドキリとした。
(え…そんな…)
都合の良いことあるはずがない。
なら、幻聴?
コール音もロックの解除音もしなかったし。
それとも、気付かなかっただけ?
確かめたくてキラは振り向いた。
「キラ、お前が泣く場所はそこじゃないだろう?」
まったく、油断も隙もない。目を離すとこれだ。
そんな風に言いたげにキラの愛しい人が、キラに近づいてくる。
「アスラン…」
キラに名前を呼ばれたアスランはその秀麗な顔に笑みを浮かべる。
これも幻覚?
「お前が泣く場所は、ここ」
そう言って、引き寄せられたのは彼の腕の中。
ほんわり伝わる彼の温もり。
――あぁ、
「アスランだ…」
幻なんかじゃない。
確かに近くにいる。
だって、こんなに温かい。
キラはアスランの背中に腕を回し、身を預ける。
暫らくそうして抱き締め合って。
惜しく思いながら少し体を離し、キラが顔を上げるとアスランの熱が籠もった翡翠の瞳とぶつかる。
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