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□ちょこっと―お正月―
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はっきり言って、アイツはよく分からない。
親友だとは思っている。しかし、まだ互いのことを知らないんだなと、
この時、改めて思い知った。
【ちょこっと 0.9話】
まだ正月気分が抜けない冬休み明け。
校舎に入っていく生徒達の足取りがわずかに重そうだ。
しかし、例に反して元気なヤツが目の前にいた。
教室の中はコイツがいるだけで明るい。
「ねぇねぇ、アスラン」
「キラ……お前はなんでそんなに元気なんだ?」
「え?うーん……」
暫く首を傾げて考えたキラは、人懐っこい笑顔で、自由ってすばらしいよね!と答えにならない答えを返してきた。
「じゃなくて、だよ!アスラン!」
「…なんだよ」
「お年玉って貰った?」
「お年玉?ああ…」
「おっと、金額は聞いてないからね!きっと君のことだから一般人には想像がつかない金額を…」
「ちょっと待て。俺をなんだと思ってるんだ?」
「ザラ家の嫡男」
「……………そう言うお前は?」
「ないよ」
「え?………!?」
あからさまにキラの声のトーンが低くなり、見るとキラは俺から視線を反らし重い空気を放っていた。
(話をふったのはそっちだろう!?)
理不尽だと言いたいが言えない雰囲気に黙るしかない。
「あれはお年玉じゃないんだよ。賃金」
「は?」
何言ってるんだ?
「元旦から古狸どもと顔合わせてご機嫌とるなんて、労働だと思わない?僕は跡継ぐ気なんてないのに」
「……失礼だろ」
それに、そう言われても話が見えないんだが。
詳しく聞こうにも、口を挟める雰囲気ではない。
「だから、家に帰らなかったんだ。そうしたら正月の間、鬼ごっこだよ!」
トラップをしかけてもしかけてもしつこく追い掛けてきたらしい。
もう何からツッコんでいいのかわからない。
「でも、持つべきものは姉だよね!僕の代わりに挨拶に出てくれて…!」
姉の話になった途端に、上機嫌。
「とりあえず、キラ…」
「何?」
「お前、誰だ?」
「やだなぁ、僕はキラだよ」
俺に話すだけ話して鬱憤を晴らしたキラは、さぁ行こうよと俺の腕を引っ張り、始業式のために移動を始める。
親友が分からなくなった日。
この日、わかったのは親友に姉がいるということだけだった。
*アトガキ*
無理矢理すぎた……。