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□我儘
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ドゴッ――!!
雲一つなく晴れ渡った空と、澄んだ風。
そんな爽やかな休日に相応しくない鈍い嫌な音が響き渡った。
「キラ!?」
慌てたのはアスランだ。
一階のリビングで読書をして寛いでいたアスランだが、二階から響いてきた不穏な音に何事かと階段を駆け上がった。
そして、午前中は仕事をすると言って自室に閉じ籠もっているキラを心配し、その部屋のドアを押し破る勢いで開けた。
「あ。アスラン」
と、そこには椅子と一緒に後ろへ倒れこんでいるキラ。
状況とは裏腹に、やけにのんびりしたキラの声にアスランは脱力した。
「あ。じゃない!何してるんだ?」
「んー?」
仰向けに倒れたまま自分を見上げるキラを起こそうとアスランが手を差し出す。
それにキラは嬉しそうに破顔した。
キラを立たせてから、キラの下敷きになっていた椅子も立たせる。すると、キラはまたその椅子に腰をかけた。
「大丈夫、今度は倒れたりしないから」
フラッと腰を下ろしたキラがまた椅子から落ちるんじゃないかと心配するアスランに、キラは安心させるように微笑む。
しかし、アスランはキラの言葉に顔をしかめた。
「キラ…まさか、わざとじゃないよな?」
「あ――………うん?」
笑顔で誤魔化そうとしたキラだったが、長年傍にいるアスランにそれは通用しなくて。
「キ〜ラ〜?」
低く自分を呼ぶ声にキラは、長いお小言が始まることを覚悟した。
「大怪我したらどうするんだ!!」
「ご、ごめん。…でもね、スッキリしたから結果オーライってことで」
「は?」
論点が違う。
キラが違う次元から持ってきたような話をすることは度々あることだ。
それが昔からの事で、いくら慣れているからとはいえアスランにも一から順を追わないと分からないこともある。