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□我儘
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「何がしたかったんだ、お前は?」

アスランが溜息混じりに問い掛けると、キラは当たり前の事をいうように平然と答えた。

「頭ぶつければスッキリするかと思ったから」

何でまたそんなことを思ったのか。
キラ自身にも分からないけど。

「ただ空見てたら、僕は何してるんだろうって……置いていかれたカンジがしてさ。でも、動くのが怖くて…」


変でしょ?と小さく笑みを漏らしながら言葉を続けるキラは、本当にスッキリとした表情をしている。


「でも、独りぼっちは、嫌じゃない?」

「我儘だな」

「うん、我儘」


今在る場所から辺りを見回して。
そうした時に、本当に誰も居なかったらどうすればいいのだろう。
なら、一人だけでもいい。自分から決して離れない、自分を離してくれない人が欲しい。



そんなエゴ。


――馬鹿みたいだ。


「だから、自分に喝入れるために頭ぶつけてみた、と?」

「うん」

「で?スッキリした?」

「うん。」

頭をぶつけても案外痛くなかったし。逆に視界が拓けた気がした。
鳥の鳴き声も、波が打ち寄せる音も、聞こえた。
一人じゃなかったんだ、と気付いた。

それに。


「…アスランがいてくれるって分かったからね?」

キラがとびきりの笑顔で答えれば、アスランは愛しげに目を細める。


「我儘だな」


「うん、我儘。……でも、叶えてくれるでしょ?」


「当たり前だろ」


アスランはキラの頭にキスを一つ落とした。












END
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