short

□叶わない恋
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心地よい波音。

アスランは目を閉じ、その音に耳を傾けていたが足元に冷たさを感じ、目をやった。

いつの間にか、波は足元まできていて。

そして、砂を攫っていく。





【叶わない恋】






「こんな所にいたの?」

波に攫われていく砂を、ただ眺めていたアスランはその声に視線を上げた。

「……キラは?」
「眠ってるよ、相変わらずね」

皮肉るような色を含むその声。笑わない瞳。
聞きたくない。見たくない。

自分の隣に来た彼から逃げるように、アスランは視線を逸らした。

「そんな言い方するな」
「どうして?だって本当のことじゃない?」
「っ!……それでもっ、」


堪え切れず振り返り、アスランが彼を睨むと彼は可笑しそうにクスクスとわらっていた。

「本当に、君たちは、似てるね」

彼は紫の瞳を細め、本心からそう言った。
それにアスランは眉をひそめる。
どこが似ているというのだろう?どちらかというと正反対のように言われることが多いのだ。なのに、目の前の彼は似ているという。

「アスランも寂しいんでしょ?自分が解らなくて。」

ゆっくりと、確実に彼はアスランに手を伸ばしてくる。

「そんなこと…!」

アスランは彼から逃げるように後退る。
ズボンの裾が濡れた。

距離を取られて、彼は一瞬悲しげに眉を寄せて。しかし、すぐに微笑んだ。

「なら、どうして時折寂しそうな表情をするの?……不安なんでしょう?苦しくて、切なくて、寂しくて。寂しくて、寂しくて……」

「やめろ!!」

すべてを見透かしているかのような紫の瞳に見つめられて、深緑の瞳が揺れた。

「なにより大切な人が、以前のように名前を呼んでくれないことが」

「そうしているのはっ…!」

「僕のせい?」





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