short
□叶わない恋
2ページ/3ページ
心地よい波音。
アスランは目を閉じ、その音に耳を傾けていたが足元に冷たさを感じ、目をやった。
いつの間にか、波は足元まできていて。
そして、砂を攫っていく。
【叶わない恋】
「こんな所にいたの?」
波に攫われていく砂を、ただ眺めていたアスランはその声に視線を上げた。
「……キラは?」
「眠ってるよ、相変わらずね」
皮肉るような色を含むその声。笑わない瞳。
聞きたくない。見たくない。
自分の隣に来た彼から逃げるように、アスランは視線を逸らした。
「そんな言い方するな」
「どうして?だって本当のことじゃない?」
「っ!……それでもっ、」
堪え切れず振り返り、アスランが彼を睨むと彼は可笑しそうにクスクスとわらっていた。
「本当に、君たちは、似てるね」
彼は紫の瞳を細め、本心からそう言った。
それにアスランは眉をひそめる。
どこが似ているというのだろう?どちらかというと正反対のように言われることが多いのだ。なのに、目の前の彼は似ているという。
「アスランも寂しいんでしょ?自分が解らなくて。」
ゆっくりと、確実に彼はアスランに手を伸ばしてくる。
「そんなこと…!」
アスランは彼から逃げるように後退る。
ズボンの裾が濡れた。
距離を取られて、彼は一瞬悲しげに眉を寄せて。しかし、すぐに微笑んだ。
「なら、どうして時折寂しそうな表情をするの?……不安なんでしょう?苦しくて、切なくて、寂しくて。寂しくて、寂しくて……」
「やめろ!!」
すべてを見透かしているかのような紫の瞳に見つめられて、深緑の瞳が揺れた。
「なにより大切な人が、以前のように名前を呼んでくれないことが」
「そうしているのはっ…!」
「僕のせい?」
.