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□言霊
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現に今も書類を放置して、最後のお茶会を愉しんでいるのだから、わざと放置したと思われても仕方ないのだろうけれど。
「そうだ、キラ。明日、誕生日だろ?」
「…うん、そうだよ?」
そんな日に、君が僕の世界を壊す。
「すまないが、プレゼント用意できてなくて…」
「いいよ、式の準備で忙しかったんだし」
こうして君が一緒に居てくれるのが最高のプレゼントだ。
「今更だけど、何か欲しいものないか?」
欲しいものならある。
でも、それは叶わないと分かってるのにどう言えばいいの?
「何でもいいの?」
「あぁ」
「じゃあ、お願い三つ聞いて?」
そこでその日初めて僕は君の顔をしっかり見て視線を合わせた。
叶わないなら、せめて…と。
「お願い?何だ…怖いな」
君は茶化したように言って笑ってみせた。
「そんなに難しいことじゃない……と思う」
「頼りないな。いいよ、何?」
カップを置き、こちらを見て優しく細められたエメラルドの瞳。
どきりと胸が高鳴る。
そのせいか、声が震えてしまいそうだ。
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