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□届くことのないラブレター
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溜息とともに吐き出された言葉には、悲しみと憤りの色が含まれていた。

どうして気付いてやれなかったのだろう。
どうして彼は一人でいろんなものを抱えてしまうのだろう。
どうして悲しみや痛みを分けてもらえないのだろう。
どうして、こんなに近くにいるのに、お互い一人なんだろう。

そんないろんなものが混ざった溜息が合図になったのか、ベッドに横たわるキラが自分を抱きこむように腕を抱え、背中を丸めて震えだした。

これが、キラが隠していること。
同室のアスランだからこそ気付けたこと。

背中を丸めた事によってシャツの裾から、チラリと背中が見えた。
そこには、痛々しい傷跡。まだ新しいものだ。

「…ぅあ……くっ…」
「キラ」
「ふっ…う……んく…」
「きら」

震える背中に声をかけても、目覚める気配はない。
夢の中で苦しむキラ。

(違う、夢の中でも苦しんでる)

傷の事ならラクスも知っているだろう。
でも、

「…あ、すら……」

ベッドで背を丸め、
自らを抱き締め、
震えながら、
“いたみ”に耐え、
助けを求めるようにアスランの名を呼ぶ事は知らないだろう。

「キラ」

アスランはベッド脇に膝をつき、震える彼の名を再度呼ぶ。


二人だけの秘密のおまじないは、本当は額なのだけれど。
願いも、想いも一つにできそうにないから。


僅かに見える背中の傷跡に口づけた。



「すきだよ」


薄く小さな花を咲かすように。






――――これで、こわいゆめみないよ






幼い頃のキラが遠い記憶の向こうで笑った気がした。





END


後書き
解説しなくてもいい、わかりやすいものが書けるようになりたいです。


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