非日常ばっかりだね

□あいってなんだ
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「愛ってなんだ、京平」

「なんだ、急に」



わたしが問いかけると京平は小説から視線を外し、わたしを見てきた。小説を見ながら答えてくるだろうと思ったわたしは、ちょっとだけ驚いた。いや、ほんとにちょっとだけだけど!

街中で見つけた知り合いのワゴン車に乗り込めば、1人しか乗っていなかった。残念に思いながらも乗っていた1人、京平にちょっかいをかけながら他の3人を待つ。

京平によると狩沢姉さんとゆまっちはアニメイトに、渡草さんはタバコを吸いに行ったらしい。それにしては渡草さん遅いなあ、とかそんなことを考えながらも、気にせず京平にちょっかいを出し続けるが持ち前の冷静さでわたしは軽くスルーされていた。


こうなったら意地だ…!


そして思いついた答えが「愛ってなんだ」という質問だった。意味分からないわたし、いや自分でも意味は分からないし多分苦し紛れの質問なんだと思う



「いや…えっと、なに」


「…いや、愛って言っても色々あるしな。というか本当に急にどうしたお前、熱でもあるんじゃないか」


「あー、うん、熱はないよ絶対。なんだろごめん忘れて!」


「お前がそう言うなら忘れてもいいが…暇なのか?」


京平は眉間に皺を寄せる。ギリギリ眉間が見えるか見えないかくらいの感じだけど!京平は小説にしおりを挟んで、わたしのほうを向いた。京平が大きく動いたから、ワゴン車がゆらっと上下に揺れる


「暇なのか?」


同じ問いを2回目。そんな目して言わないでほしいなあ…、まあ暇だよね、うん。ほんとは狩沢姉さんとゆまっちがいるだろうなあと思って乗り込んで来たんだしね。

そしてわたしは京平の問いにひとつ、うん。と頷いた。京平はそれに一言、そうか、というとまた小説を読み出した。

なんだったんだこれ…今のやりとり…。




 


しいん、と続く沈黙、耐えられないな、帰ろうかなあと体を揺すっていると、京平は小説に目を向けたまま、こう言った



「お前にとって、愛ってなんだ?」


「え?わたし?」


京平はページをペラリと捲りながら頷く。並んだ活字から視線を外すことはなかったけれど、きっと耳の神経はこっちに来てるんだと思う。


「愛かあ…」


自分がした問いかけを、同じように問いかけられた。うーん、この質問は答えにくいな、ほんとに。なんでわたしこんな問いかけしたんだろーな。


うーん、うーんと唸りながらわたしは考える。愛…愛なあ…。そんなものは価値観だし、わたしはめったに人を好きにならないから、愛するっていう感情は意味わかんないし…。


「…わかったか?」


「や、わかんない」


「わからないくせに俺に質問したのかお前…」


京平がため息をつく。あーあ、そんなにため息ついちゃ幸せが逃げちゃうよ!とは言わない。京平は苦労人だしね、うん。ちょっと不幸?というか苦労してるのが京平らしいし。おっと話がズレてしまった


「あー、えっと」


京平がもごもごと口ごもる。京平はまた小説を閉じた。あ、しおり挟んでないじゃん京平。

狭いワゴン車の中で京平が動き出す。今度はワゴン車を揺らさないように助手席からわたしの方に向いてきた。なんか…顔赤いけど京平のが熱あるんじゃないの?


「俺、とだな…その、愛がなんなのか…」


あ、表紙が見えた。恋愛小説とか、似合わないね、京平。というか恋愛小説も読むんだー。



「ほら!やっぱり2人いるじゃない!久しぶりだねー!ていうか、え、なにドタチン!ちょっと睨まないでよ」


「ただいまっす門田さん!今日はほんとに有意義なアニメイトでしたよー!あれ、渡草さんはまだ帰ってきてないんすか?」


京平の言葉を遮ってガラッとワゴン車の扉が開いて、狩沢姉さんとゆまっちが青い袋を抱えてやってきた。おお…2人ともホクホクしてらっしゃる!


京平を見るとさっきより赤い顔して、狩沢姉さんとゆまっちを睨んでいた。

狩沢姉さんとゆまっちは、京平の手のなかにあった恋愛小説を見るとニヤニヤして京平をからかいだす。うーん、やっぱり仲いいなあ。京平っぽいや!






(あれ、ドタチン顔赤いわよぉ?)
(俺らに秘密で何言おうとしてたんすかねぇ?)
(…ーっ!黙れ手前らァァァ!)






―――――――

似非ドタチン登場!
企画「スポットライト」さまに提出する作品です^^
楽しく書かせていただきましたー!というか企画に参加する方々が豪華すぎて…!なにあれ!わたし参加してもよかったんだろうry
精一杯書かせていただきましたが、扱い始めたのが最近なのでまだまだキャラを掴めてないかもです…!

ありがとうございました!
(恋愛小説読むドタチン超可愛い^//^)

10/06/03




 

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