novel


カガクハンノウ
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どこに居ても、なにをしていても。



あたしの頭を占めるのは、ただ君の事。





カガクハンノウ





もはやこれは病気の領域なんじゃないかな、なんて真面目に思ったりする。


だってどう考えても尋常じゃない、この状態。



数ヶ月前のあたしは、こんなあたしになる日が来るなんて想像すらできなかった。



それぐらいに、あたしの日常は変化した。




春になって君が登場した事で。


大きく大きく変化した。


たった、それだけの。


こんなに大きな変化。




朝、早く起きるようになった。

鏡を見る時間が10分長くなった。

登校する時間がちょっとだけ遅くなった。

授業を真面目に聞くようになった。

バイトが楽しくなった。

コーヒーが、美味しく淹れられるようになった。



小さな小さな変化が積み重なって、少しづつあたしを変えていく。



「なんかさぁ、最近調子よすぎじゃない?」

「そぉ?」

「うーん、なんかこう、きらきら〜って感じがするんだよねぇ」

「きらきら、ですか」

「これは…男、かね?」

「え?いやいやいや…」

「あ〜、何その反応。男なんだな?!抜け駆けかこいつめ!」

「にゃは〜」



奈津美にいじられながらも気になるのは教室一番後ろの机。


こんなにぎゃあぎゃあやってて、うるさくないだろうか。


せっかく寝てるのに、起きちゃったりしないだろうか。


…聞こえちゃったりしないだろうか。




内心はらはらしながらちらっと見てみたけど。

彼はまったく起きる気配もなく、すやすや夢の中。



ほっとしながら、ちょっとだけがっかりする。


あたしにどれだけ大きな変化が起こったとしても。

彼にも同じ変化が起こるとは限らないのだ。


それが現実。




わかってるからこそ、あたしにはやらなきゃならない事がある。


ただの変化で終わらせないために。


今のあたしにできること。




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