novel


たとえばそれは。
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それは些細な事。


おはようの挨拶。

休み時間の雑談。

歩いていく、後姿。



そんな些細な事が、日々大きな意味を持つようになる。


交わす冗談。

一瞬の表情。

さよならの挨拶。


そうして些細な、本当に些細な事に一人勝手に舞い上がる自分に苦笑する。



抱えきれなくなったら、私は。
どうするのかな。


「おっしゃ!授業終了!!やっと部活だー!!」


聞こえる声がすごく君らしくてなんだか微笑ましい。

楽しそうに、嬉しそうに笑う君に、気付かれないように。


「掃除してからね?」


しかたないなって顔して箒を手渡す。


「掃除?!ああ、掃除はお前に任せた!これやるからさ!!よろしく!!」


箒を押し返す手には、君のシャーペン。


「…ってちょっと鈴鹿!?」

「悪ぃけど、今日はそれで勘弁なー!!」


あっという間に逃亡する君。
残される私。


手には箒と、君のシャーペン。


ああ、どうしよう。
ホントにもらっていいのかな?


君は知りもしないでしょう。

このプラスチックのシャーペンが、どんなに重いか。


どれだけ私を揺さぶるか。



それは些細な事。


たとえばそれは、掃除当番の肩代りにもらった、小さなシャーペン。


君にはただのシャーペンで、今日からは私の宝物。



些細な些細な出来事は日々、意味を持って大きくなっていく。


抱えきれなくなったその時は。


君に打ち明けたい。



この些細で愛しい、日々の感情を。



→あとがき


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