dream


スペシャル
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今日のお昼は、購買で買った焼きそばパンとフルーツサンド。
コーヒー牛乳。


入学以来、初めて買えた人気メニュー!


この時期暑苦しいけど、体育の授業が4限目で良かったって、初めて思った。





スペシャル





風がきもちいい、教室窓際の席。

珠美ちゃんと机を合わせてお弁当を広げた。


「かなちゃん、今日は豪華だねぇ」


珠美ちゃんがにこにこ顔であたしの今日のメニューを眺める。


「へへー!体育終わって即ダッシュしたからね!」


購買一番乗り。
結構、頑張って走った!


「あ、だからジャージのままなの?」


「とりあえず初めての人気メニューを味わってから、落ち着いて着替えようと思って」


ジャージがどうとか、着替えてから、とかより何より食すのが先。


「奈津美にさ、ずっとフルーツサンドの自慢されてたからもうとにかくこれは食べてみなきゃ!とね!」


「そこまで望んでもらえるなんて、きっとフルーツサンドも本望だね〜」


「じゃあ、早速!」


「「いただきます」」


まずはコーヒー牛乳を一口、喉を潤したところで。

購買で人気No.1の焼きそばパンにぱくつこう、としたその時。



「あー!」

「んぁ?」



大口あけていざ、という時に。



「えぇなぁ、焼きそばパン」


にっかり、笑って姫条くんが現れて。



「俺も今日こそはー思てダッシュしたけど、あかんかったわぁ」


すごいな、かなちゃん!とストン、と隣の席に座る。


あたしは一口目におあずけをくらって。


「いやぁ、さすがかなちゃんやな!昇降口からの華麗なるダッシュ!」


「見、見てた…?」


こっくり、うなずく姫条くん。

あの、必死な形相を見られてた?


「なんや、見てるだけで胸がスカッとするような走りやったでー」


「あ、あははー。あたし、色気より食い気のタイプで!」


カラカラと笑ってはみたけど、やっぱりちょっと、さっきのを見られたのは。


恥ずかしい、かも。



「あ、でもでも!ダッシュしてでも焼きそばパンは欲しいよね〜」


珠美ちゃんがフォローしてくれる。


「せやなぁ、1日限定30個やしなぁ。せやから今日は俺、ハムサンドやねん。あ、俺もここで一緒に食べてえぇかな?」



ちゅーか、もう食べとるけどな、なんて言いながらハムサンドにぱくついてる。


…これは、やっぱり。

あげるべきだよね。
焼きそばパン。


あげたら、喜ぶかな。




「姫条くん、良かったら食べる?」


口をつける前で良かった。
半分に割って、差し出してみた。


「半分こでも良かったら…」


く、食い意地張ってるかなあたし。

でも、全部あげるってのもなんか大袈裟だし。



「ホンマに?!」

「え、うん。だって食べたかったんだよね?」

「せやけど…せっかくダッシュでゲットしたのにええの?」

「うん、あたしの本命はフルーツサンドだから。遠慮なくどーぞ」


「なんや、催促したみたいでごめんな。でも、ありがとう!お言葉に甘えて、いただきますー!」



嬉しそうにぱくっと一口。

わ。
半分じゃ姫条くん二口で終わっちゃう。



「〜〜〜っ!!!」

「き、姫条くん、だいじょぶ?」



ごくん、と飲み込んで。



「んまいっ!」



うなるような一言。



「いやぁ、この絶妙なソース加減!パンとの一体感!紅しょうががキリッと味を締めんねんな!」


うまいっ!って言いながら、あっという間に食べ終えてしまった。


「あ、悪い。ついつい夢中になってもた!」


「あはは、姫条くん、よっぽど食べたかったんだね!見事な食べっぷりだよ〜」


「紺野にも分けたったら良かったな、すまん!」


「あ、ううん、私は自分のお弁当だけでお腹いっぱいだから大丈夫ー」


「…と。かなちゃん、食べへんの?めっちゃうまいで!」


「た、食べるっ」



我に返ってぱくっと一口。

もぐもぐ。


…確かにこれは!



「美味しいね!」

「せやろ!?」

「うん!ダッシュして良かったー」


姫条くんと一緒に美味しいね、が言えるのも。

なんだか嬉しい。



「ほな、かなちゃん。これな」


姫条くんが大きな手で、ハムサンドを差し出して。


「俺のも半分こ、や。食べてくれる?」


「でも、姫条くんこれじゃお昼足りないでしょ?」


「そんなん、気にせんでえーよ。バイト前になんか入れるし。だから、はい。かなちゃんの分な!」


にっこり笑顔で、掌にのせてくれる。


「あ、ありがとう」


「こちらこそや」


二人でもぐもぐ食べながら。


なんだか。

なんだろう。

半分こっていいな。




それから、3人でワイワイご飯食べて。


フルーツサンドも3人で分けあった。




「んー!満足!」

「私もお腹いっぱい〜」

「やっぱり、ご飯はみんなで一緒に食べんのがえぇな!」


カワイイ女の子と一緒やと更に美味くなるで!なんて笑う。


姫条くんは、一人暮らしなんだっけ。



お家じゃいつも一人でご飯だもんね。


それはきっと、多分。
あたしだったらさみしいと思う。



「カワイイかどうかは別にして、またいつでもおいでよ。一緒に食べたら楽しいし」


「そうだね〜。わたしも今度はみんなの分お弁当作ってくるよ〜」


「紺野っ、かなちゃん!ありがとうなっ」


えぐえぐ、なんて分かりやすく泣き真似して。


「今日は特に、一人でご飯は避けたい日やってな。ほんまに、ありがとう」



ごちそうさん、て手を降って教室を出て行った。


なんだろう。

今日は何か特別な日なのかな?


考えながら、コーヒー牛乳を飲み干した。



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