No.6
□誓いのくちづけ
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「永遠なんてあり得ない。」
おれは紫苑に冷たく言い放った。
『……。』
紫苑は黙って聞いている。
「あんたも見てきただろ?ここらじゃ、いつ死ぬか分からない。少しでも隙を見せれば路地裏に引きこもれるのがオチ…『でも!』」
言葉を遮るように口を挟む紫苑。
『でも…僕は、「ぼくは君を一生愛する。」』
クク、と笑って紫苑の目の前に立つ。
「口じゃ、どうとでも言えるよな?」
『っ……。』
「上手く口車に乗せられて騙されることだってあるんだぜ?…ここはアッチとは違うんだ。」
『じゃあ、ネズミは僕のことを信じてないのか?』
「さぁな…。」
『口じゃ信じられないなら行動で示せばいいんだよな…うん、そうだ。』
自問自答を始めた紫苑を呆れ眼で一瞥する。
『ネズミ!』
何か思いついたように目を輝かせる紫苑。
「…何だよ。」
『目を閉じてくれないか?』
「何で『いいから!』」
おれは呆れたまま目を閉じる。
「…っ!?」
ふいに唇に柔らかいものが触れた気がした。
『も、もういいよ。』
ゆっくり目を開けると顔を真っ赤にした紫苑がいた。
「あんた、何して…。」
いきなりの出来事に頭がついていかない。
『君が…言葉じゃ信じられないって言うから。』
語尾が小さくなり聞こえなくなる。
おれは笑って紫苑を抱き寄せて耳元で呟く。
「今のキスは何のキスなんだ?」
『君は、分かってて…』
あぁ、分かってるさ。だけどあんたに言わせたいんだよ。
「陛下、言ってくださらないと分かりませんよ?」
自分でも驚くような甘い声で紫苑を促す。
『ち、誓いのキスだよ…。』
紫苑は俯き、自分に体を預けてくる。ぎゅっとおれの服を握って。
「えらく大胆なことするんだな。」
『……。』
「ならおれはあんたを見習うかな」
紫苑の顔を上げさせ、目線を合わせる。
『ネ…ズミ……。』
「紫苑、誓いの口づけを…。」
おれは静かに口づけた。
END