No.6
□こわいもの(ネズミVer.)
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『ねぇ、ネズミ?』
本に目を落としたままのネズミに構わず続ける。
『こわいものってある?』
「…はっ?」
やっと顔を上げてくれた。
「紫苑、いきなりどうしたんだ?」
ネズミの顔には明らかな疑問符が浮かんでいる。
『いや、ふと思ったんだ…。』
「こわいモノ…か。」
ネズミは僕の言葉を反芻する。
淡いグレーの瞳を閉じ、考えこむネズミ。
短い沈黙の後、口を開いたのはネズミだった。
「…紫苑。」
『へっ?』
次は僕が疑問符を浮かべる番だった。
「オレは…紫苑、お前がこわい。」
『僕が、こわいの?』
何がこわいんだろう…。僕、ネズミに何かしたかな。
ねぇ、何でこわいの?
ネズミは僕の問いに答えることなく再び目を落とした。
(天然…オレはアンタがコワイ。いなくなるのが怖いなんて、ここじゃ馬鹿げてるかもな)
(だけど、初めて護りたいものが出来た)
(紫苑、それがお前だ)
(絶対守るから…命に代えても)
END