No.6
□こわいもの(紫苑Ver.)
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翌日、ネズミに逆に問われた。
コワイモノはあるのか
そりゃ僕だって人間だからこわいものの1つや2つ…はある。
『僕は…死ぬことかな』
「ふぅん」
生返事をした後、ネズミは在り来たりだな。と言った。
『でも、一番怖いのは』
短い沈黙が流れ、続きを促すようなネズミの双眸と目が合った。
『1人で死ぬことかな』
気まずくなり、目をそらす。
全てを見透かすようなソレから。
「…紫苑」
傍に近づく足音が聞こえたかと思うと、俯いた視界にネズミの足が見えた。
『ネズミ?』
ゆっくりと顔を上げる。同時に抱きすくめられた。
『!?』
「なんで…。」
『ネ…ズミ…?』
顔は見えないが声色は暗い。ネズミらしくない。
『歌をうたって欲しいな。』
ネズミの体に手をまわしながら呟く。
「…。」
『うたって欲しい…。』
(僕が死ぬ時は君に歌をうたって欲しい。どんな歌だっていい。
最後に聞くのが君の声でありますように。)
(歌なんてうたわない。誰が死んでいいなんて言うか。
ずっと…おれと生きていくんだから)
あぁ、これも我が儘か。
END