No.6

□求めればいい
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そこには、床にぺたんと座った紫苑がいた。

タオルで前を隠して。


「何があったんだ?」

「…。」


微かな躊躇いを見せたが俯いて話し始めた。


「出ようとしたら滑って、転んだんだ…」


話し終えた後も黙ったままのネズミに不審そうに問いかける紫苑。


「ネズミ?」


突然、ネズミが目の高さにしゃがみこんだ。


「ネズミ!?」


そして、抱かれる。


「怪我は?」

「えっ、別に無いよ。頭は打ったけど…」


そう返すと、頭を撫でられた。


「腫れてる…」


小さく呟く声さえも綺麗に聞こえた。


「大したこと無いよ。冷やしたら直る…っ!?」


ふいに視界が遮られる。

口唇に感じた。触れるだけのキス。

パサッと落ちるタオル。


「良かった。」

「…あっ。」


惜しいとでも言うように、ゆっくりと離れる唇。

間近にあるネズミの顔をじっと見る。


「足りないですか、陛下?」

問われ、カッと顔に熱が集まるのを感じた。


「ぼくは、平気だから…」


立ち上がり、去ろうとするもネズミに止められる。


「紫苑。」

「な…に……?」

「答えは?」

「あぅ…えっと…。」


顔を真っ赤にして黙る紫苑に追い打ちをかけるように続けるネズミ。


「しおん?」

「解ってるんだろ…??」

「言って下さらないと分かりませんよ。陛下??」

「〜〜っ!!君は狡い…」

「何とでも。」

「ネズミ、して??」

「陛下の仰せのままに。」


ネズミは紫苑の手の甲に軽くキスをすると、紫苑にキスの雨を降らした。


(俺からは求めない。きっかけをやるから、アンタから俺を求めればいい)




END
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