No.6
□イヴ<ネズミ
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『あ、イヌカシ』
「どうだった?」
『うん凄く良かったよ』
ネズミには内緒で、イヌカシに頼みこんでネズミの仕事場を見に来たんだ。
「そりゃ良かったな、珍しいもん見れて…俺はこれから用事があるからコイツと帰りな」
イヌカシの隣には賢そうな犬がいた。
『いいよ、1人で帰れるし』
「でも、用心するに越したことは無いだろ?」
『それは…』
「あんたは良くも悪くも目立つんだから」
じゃあな、と手を振りイヌカシは早々に立ち去ってしまった。
『あ、イヌカシ!!良くも悪くもって何だよ…』
1人残されて、ふと犬を見た。
黒い。綺麗な毛並みをしていた。彼の髪はもっと綺麗だ。
『………っ』
黒から彼を連想してしまった考えを消すかのように僕は首を振った。
『帰ろうか…』
ワン、黒い犬は返事をするように一吠えした。
帰路についた後、犬と別れ、僕は息をついた。
『ネズミ……』
頭の中に旋律が蘇る。観客は皆、魅了されていた。僕もその1人だが…。
彼が声を発した瞬間、静まりかえり皆耳を傾ける。今までとは全く別の空間になる。
澄み切った声。本当に綺麗だった。普段接しているネズミとは真逆……いや人を魅了するところは同じかな?
。