エデンクロス

□受難というか、彼の場合は自業自得【光と闇の輪廻】
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 ある日曜日の朝。佑輔はるんるんと相模のマンションに向かっていた。
 エアバイクを駐輪場に停め、買い物袋を提げて、軽い足取りで相模の部屋を目指す。
(いい天気だなー。相模クン、もう起きてるかな? 日曜だからまだ寝てるかも。まだ寝てたら朝ごはん作ってあげようっと)
 大きめのリボンで髪を二つに結い、チェックのワンピースにジーンズといういでたちの彼は、どこから見ても女の子だ。
 鼻歌交じりに相模の部屋まで行き、呼び鈴を鳴らすが、反応がない。やはりまだ寝ているのかもしれない。もう一度鳴らしてみる。無反応。
 仕方がないので合鍵を出そうとした時、ガチャリと鍵の開く音が。
「…んー、どちらさん?」
 寝ぼけ眼の相模が、重い瞼を気力で押し上げながら顔を出す。寝癖で髪がはねている。
「おはよっ、相模クン」
「…あー、ユウか」
「その様子だとまだ朝ごはん食べてないよね? 作ってあげるっ」
「おー、サン…、!」
 礼を言いかけ、相模の脳が急激に覚醒した。ユウ。まずい、今部屋に入られるわけにはいかない!
 昨夜バイトから帰ってきた時、疲れていたので部屋の片づけをせずに寝てしまったのだ。
 部屋の惨状を思い出した相模は、冷や汗を流して作り笑いを浮かべた。
「いやっ、今日は大丈夫! あ、いやご飯作ってくれるのはうれしいんだけどさ、今じゃなくてもいいっていうか、部屋で食べなくてもいいっていうか。
 あ、食べるなら外行こう! ファミレスにでも行ってさ。すぐ着替えるから部屋には入るな!」
「えー? でも食材持ってきちゃったし」
 と、佑輔は中を覗こうとする。相模がさっと体を移動させ、佑輔の視界を遮る。
 ひょい、さっ。ひょい、さっ。………………。
 頑なに中が見えないようにする相模に、佑輔は不審なまなざしを向ける。
「…相模クン、もしかして」
「んー? なんでもないよ。大丈夫、すぐ着替えてくるからユウはここでおとなしーく待っててくれ」
 声が裏返っている。佑輔はますます半眼になり、
「ボクに中に入られちゃまずい理由があるの? あるんでしょ」
 ぎくうっ、と相模は硬直する。そこにすかさず、佑輔は必殺の泣き落としをお見舞いする。
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