エデンクロス

□将来の夢、望む未来【Fate Spiner×マジカル☆ラビリンス】
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 恩は織の手を引いて横道に入った。道を抜けると、少しだけ人通りが少なかった。
 そのためか、通行人がときどきこちらを珍しそうに見てくる。
 織の外見は人目を引くし、恩の絳髪緋眼も藍泉国内ではそうそう見かけるものではない。
 仮装パレードの時間ならともかく、祭りの最中とはいえ、どうしても目立ってしまう。
 地元ならば顔見知りも多いし、さほど周囲の視線は気にならないが、ここはいつもとは違う場所なので、好奇の視線が突き刺さる。
(う〜、やっぱり見られてるなぁ。こっちまで来ない方がよかったかも)
 慣れてきているとはいえ、周囲の視線が気になる。
 一方の織は視線など気にしていないようで、きりたんぽを食べてご機嫌だ。
(織は全然平気みたいだな……ダメダメ、俺がしっかりしないと!)
 グッと気合を入れ直し、恩はいい店がないかときょろりと首を巡らせる。
「あ、織、のど渇いてない? あそこで飲み物売ってるから買ってきてあげるよ」
「うん、じゃあリンゴジュースがいい!」
「分かった。そこの街路樹のとこで待ってて」
「うんっ」
 織が街路樹に向かうのを見届け、恩は屋台の店員に話しかけた。
「すみません、リンゴとコーヒー牛乳下さい」
「はーい、三百イェルになります」
 財布からお金を出し、店員に渡そうとした時、思いがけない声が飛び込んできた。
「おいおい、なんだお前、その妙な仮面はよー」
「羽まで生えてるぞ。もしかして人外かぁ?」
(!!)
 品のなさそうな男の声。問題はその言葉の内容だ。
 今、この辺りでそういった外見特徴を持っているのは織くらいだろう。まさか。
 慌てて声のした方を見れば、ガラの悪い男二人が織に絡んでいる。
(織!)
 織は耳と尻尾が垂れ下がり、遠目でも分かるくらい身を縮こまらせている。
「人外のくせに、人間様の祭に紛れ込んでるんじゃねーよ」
 男の片割れが織に手を伸ばす。織はびくんっ、と大きく身を震わせた。
 瞬間、恩は飲み物を受け取るのもそこそこに駆け出す。
「あっ、お客さん!?」
 通行人の間をすり抜け、織のもとへと駆けつける。公衆の面前であろうと男を殴り倒すつもりで。
 だが、その寸前、伸ばした男の腕が何者かに掴まれた。
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