エデンクロス

□ルカフィル 刹那の邂逅【Fate Spinner】
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 断ち斬られた身体(からだ)。黒い煙が全身から溢れ出る。
 痛みはない。ただ安堵だけがある。これで、守れる。
 あの娘(こ)がいたこの世界を。あの娘が愛した家族を。
 霧散していく身体。魂が浄化されている。
 消えるのだ。この世から。死ぬのではなく、消滅。
 それは理解(わか)っていたこと。これが自分の運命。いや、宿命。
 元々、輪廻から外れている闇黒(あんこく)の王。その分身である自分も、輪廻から外れている。
 命を落とすこと、それすなわち滅すること。
 だから、他の生物のように死んだらいつか転生して新たな命になることなどない。
 永劫(えいごう)の別れなのだ。家族とも、友人たちとも、リヒトとも、恩とも。
 喪ってしまった、愛しいあの娘とも。でも、守れたからいい。
 もう二度と逢えなくても、君が愛したすべてを守れたのなら。
 満足げに微笑んだその時――
 優しい手がルカフィルの頬にそっと触れる。瞠目するルカフィルに、陽だまりのようにあたたかな微笑みを見せるナハト。
 ルカフィルは人生の中で、最高の笑顔を見せた。
 それは彼女しか知らない、刹那の出来事。
 己の願望が見せた、ただの幻影かもしれない。
 それでもルカフィルは幸せだった。ルカフィルはうなだれている恩を見る。
 つらい思いをさせてごめん。でも、気に病まないで。
 ねえ、君に逢えてよかった。あたしは今、とても幸せだよ。
 だって君がいたから、あたしはこの世界を守れたんだから。



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