光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第3廻
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 シェルティナ行きつけのスーパー『メルディ』は、ころんが住む朱湊(すみなと)と、隣町の弥栄町(やさかちょう)との境にある。ころんは早足で店へと向かった。
「早く帰らないと、みんな心配するしね。それにしてもいい天気。思わず伸びしたくなっちゃう」
 そう言ってころんが伸びをした時、
「高天」
 どきーん
 聞き覚えのある声に名を呼ばれ、ころんの胸が大きく高鳴る。あわてて腕を下ろし、ぐるっと体ごと振り返る。
「あっ、碧君!?」
「奇遇だな」
 相も変わらず笑みさえ浮かべず、淡々とした返事を返す響。ころんはわたわたと落ち着かない。
「ほっ、ほんとに奇遇ね! えと…碧君はなんでこんなところに?」
「昼の買い出しだ」
「碧君も? 私もなの」
(もう名前覚えてくれたんだ。まさかこんなところで碧君に会えるなんて…夢みたい)
 自然と二人は並んで歩いていた。ころんは内心、飛び上がりそうなほどうれしかった。
「どこのお店行くの? 私は弥栄町のメルディなんだけど」
「俺もメルディだ。あそこは品揃えがいいからな」
「そうそう。小さいけど品揃えいいのよね。他のお店より安いし、家からは少し遠いけどよく行くの」
「そうなのか。あそこの店員は気前のいい人物たちで、俺も気に入っている」
 それを聞いて、ころんは響の横顔を見た。
 お気に入りのものが同じでうれしい。顔を赤くして、ころんは正面に顔を戻した。うれしくて笑みがこぼれる。
 いつのまにか店に着き、ころんは名残惜しかったが響と別れた。入口付近に積まれた淡いウグイス色のカゴを取り、クリームソースを探す。
(ふふ。このカゴもこの店がお気に入りの理由の一つなのよね。この色はママの色だから)
 ウグイス色に限らず、みどりはママの色。ころんはそう考えていた。
 花や木々、自然を愛する人だった母。だからころんの家の庭にはたくさんの植物がある。もちろん家の中にも。
(そんなママだから、自然を表わすみどりがよく似合うと思ってる)
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