光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第5廻
1ページ/10ページ

 翌日。いよいよ健康診断が始まった。クリ学の敷地内には寮や診療所もあり、数名の医者が常駐している。
 高等部だけでも、全四学年合わせると三千人以上の生徒がいるため、健康診断は学舎の医務室で、学年ごとに数日に分けて行われる。
 女子は第二医務室、男子は第一医務室へ移動中だ。
 ほてほてと歩きながら、佑輔は隣の相模に問いかけた。
「あのね、昨日改めて思ったんだけど、もしかして相模クン、ころんちゃんにキラわれてる?」
 あれは照れ隠しとかではなく、本気で嫌がっていた。
 佑輔が歩くたびに、後ろでくくられた細い尻尾のような髪が揺れる。
 周りの男子生徒のほとんどが、佑輔に興味津々な視線を向けている。
 高校生男子にしては低い背丈、そして何より女の子と見紛う愛らしい顔。中には頬を赤くしている奴もいる。
 じろじろ見るな野郎ども。視線の余波を受けている相模は腹を立てていた。
「あまり好意を持たれていないのは確かだな」
 少しぶすくれながら答える相模。ああウザい。
 相模の心中など知らないので、佑輔は相模が不機嫌なのは、ころんが自分に好意的でないからだろうと思って、いたずらっぽく微笑んだ。
「たいていの女の子は相模クンにメロメロになっちゃうのに、ころんちゃんて不思議だねー」
 それがまた、周りの野郎どもの心をつかんでいたりする。こっちを見るな野郎ども!
 相模は苛立たしげに眉間にしわを寄せた。そんな相模を見て、なんか響クンみたい、と佑輔は思った。
「そいえば、ころんちゃんについてちょっと調べてきたよ」
「…成果はどうだ?」
「まあまあかな」
 佑輔は制服の内ポケットから黒い電子手帳を覗かせた。ヴァモバやクリカとは別に、佑輔が常備している手帳だ。
 メモのページを開き、ころんのデータを探す。相模はそれを横から覗き込んだ。
「えーと、高天ころん。藍泉歴二〇一八年十月二十六日生まれ。神京(しんきょう)都出身。現住所は桜坂朱湊(おうさかすみなと)十の四の六。家族構成は父親だけ」
 これは学園のコンピュータに収められている、生徒の個人データに記されているものだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ