光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第6廻
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 いよいよ運命の朝がやってきた。
 昨夜、散々着ていく服に悩んだが、結局、普段よく着ているピンクのワンピースとなった。
(いいもん。これだって十分かわいいんだからっ)
 ため息をつき、ころんは靴を選ぶ。
「お嬢様、今日は午後から雨が降るとの予報でしたので、傘をお持ちになって下さいませ」
「ん、わかった」
「さゆちゃん、お嬢様のことよろしくね」
「言われなくても分かってるって」
「それじゃ、いってきます」
 シェルティナに見送られ、ころんと紗雪は碧家へと出発した。


 晴れ渡る空。少し雲は多いが、太陽は燦々と輝いている。
 辿り着いた碧家を見て、ころんはぽかんと口を開き、紗雪は感心したような風情だ。
「……これが碧君のうち…?」
 少し町から外れた所に、白い壁と柵で囲まれた一郭があった。
 響に渡された地図によれば、まぎれもなくそこが碧家である。
 表札にもきちんと『碧』と書かれているし。
 しかし、敷地の広さが想像以上だ。たぶんクリ学高等部のグラウンドがすっぽり入る。
 塀に沿ってずらりと植えられた樹々。庭全体を埋め尽くす青々と茂った芝生。
 花壇やら彫像などもちらりと見え、庭の奥の方にある家屋までは、門から石畳(レンガ)の導入路が敷かれている。
 導入路には一定の間隔で、道に沿ってガーデンライトが設置されていて、きっと夜には足元がライトアップされるのだろう。
「へーえ、なかなか立派なもんだな。碧って、やっぱりあの碧なのか」
「ご両親が学会に出るって言ってたから、ヒューマノイド関係の学会かしらね」
  ――ヒューマノイド。機械仕掛けの自動人形の総称。
 太古から人間は己に似た“何か”を求めた。神が己に似せて人間を創ったように、人間は己に似せて人形を造ったのだ。 
 初めは土や木、次に紙や布や陶器、そして現代では――機械。
 さまざまな時代を経て、人形は機械で造られるようになり、より人間に近くなっていった。
 一昔前までは半自律型がヒューマノイドの中では最高峰で、完全自律型の実現は夢物語だった。
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