マジカル☆ラビリンス
□1st
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父親の強制転移魔法によって、アスカは人間界に放り出された。しかも、空中に。
「いやーっ、なんでよりにもよって空なのよぉー!」
落下しながらアスカは呪文を唱えた。
「リ=アフィ=レストエルク!」
すると、アスカの手の中にほうきが現れた。うまく体勢を直し、ほうきにまたがって別の呪文を唱える。
「アフィ=リ=グオレ=ヒェウタエルク・リ=ラーチ=クム=マウロ=ウィトリセルク!」
魔法発動! ほうきはぶわり、と重力に逆らって宙に浮いた。そこでようやく一息つく。
「ふう。あー、よかった。ティアラも無事?」
きょろりと首を巡らせると、ティアラはすいーっと滑るように降りてきた。
「はい。まったく問題ありません、姫様」
ティアラは長い髪を揺らして、ガッツポーズをしてみせる。アスカは眼下に広がる人間界を見渡した。
「ここが人間界かぁ。なんかごちゃごちゃしてるとこねー。
でも、気持ちいい風吹くじゃない。やっぱり、ほうきで空飛ぶのは気持ちいいわね。
これで修行のためなんかじゃなかったら最高なんだけど」
「仕方ありませんよ、掟ですもの。でも、これはいい機会です。姫様、きっちり修行してもらいますよ!」
腰に手を当て、ティアラはアスカの顔の周りを飛びながら小言を言い始めた。
「いっつも修行をサボってばかりで、ろくに練習もしないおかげで、レベルの低い魔法しか使えないんですから!」
「うるさいなぁ。レベルが低くても、応用すればなんとかなるんだからいいじゃない!
何よ、ティアラなんて、魔法って言ったら、ドア開けるくらいしかできないクセに!」
「私と姫様を一緒にしないで下さい! 姫様は一国の王女なんですから、初歩の魔法しか使えないのでは、民に示しがつかないと言ってるんですっ!」
ティアラの切り返しに、アスカは嫌味っぽく返した。
「あたしは好きで一国の王女に産まれたわけじゃないわよ! いいわよねぇ、あんたはお気楽な妖精に産まれることができて!」
「お気楽なんかじゃありません! 私だって苦労してるんですよ。姫様の世話やら何やら…」
「何よそれ! それじゃまるで、あたしがティアラに世話かけまくってるみたいじゃないの! チビっ子のクセに生意気よ!」