マジカル☆ラビリンス

□2nd
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 閑静な住宅街。アスカはそのうちの一つ、淡いクリーム色の家を見上げた。
「ここがあなたの家? ちっちゃーい。まるで庶民の家みたーい」
 歯に衣着せぬ物言いに、渡羽は乾いた笑みを浮かべながら庭に入った。
「まぁ…庶民と言えば庶民ですけど……」
 悪気があって言っているわけではないと思うし、事実なので渡羽は深く気にしなかった。
「あ、ねぇ、渡羽! これ何?」
 渡羽に続いて庭に入ったアスカは、脇の小さな花壇を指差した。
「それは俺が作った花壇ですよ」
「これ、全部一人で作ったの!?」
「ええ、まあ。俺、花が好きですから……」
 照れ笑いを浮かべる渡羽。アスカは花壇をまじまじと見つめ、感嘆の息を漏らした。
「すっごーい。あたしにはマネできないなー」
「姫様は細かいことが苦手ですからね。一生、ムリでしょうねー」
「一生って何よ、失礼ねー!」
 腕を組んでしみじみと頷くティアラ。半生ならともかく、一生とは何よ。
「アスカさんたち、ケンカはやめて下さい。あと、花壇に気をつけて――」
「ねえ、あたしのことはアスカでいいよ。『さん』づけされるのヤなのよね」
 アスカは困ったように微笑した。
「すみません。じゃあ、今度からはそう呼ばせてもらいます」
 渡羽が素直に謝ると、アスカは尊大に頷いた。
「よろしい。ところで、渡羽はティアラが見えるのよね?」
「うっすらとですけど…」
「OK。あのね、突然だけど、あたし本当は普通の人間じゃないの。魔法使いなのよ」
「ええっ!?」
 あっけらかんとしたアスカの言葉に目を丸くする渡羽。当然の反応である。
 アスカは自慢げに笑って「証拠、見せてあげる」と指を振った。
 渡羽から二、三歩離れ、精神を集中させる。
「シッカイエルク!」
 魔法界の言語で、魔法の発動ワードを唱えたアスカは、ふわりと宙に浮いた。渡羽はさらに目を丸くした。
「ア、アスカさん? う、浮いてますよ!?」
「どお? すごいでしょ。でも、こんなの序の口よ。あたしが他にできるのは……リロ」
 言うや否や、アスカが立てた人差し指の先に火が灯った。
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