マジカル☆ラビリンス

□4th
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 アスカが渡羽家に居候してから六日。この間に、アスカはだいぶ人間界に慣れた。
 人間界の文字を覚えたいというアスカに、別に覚えずとも、魔法を使えば読み書きできるのでは?――魔法界と人間界では言語が違うのに、話が通じるのは魔法を使ったからだと教えられたので――そう言ったのだが、文字は言語と違って魔法で変換できないそうだ。
 なので、渡羽が学校から帰った後などにこつこつと教えた。
 来た当初は、人間界の文字の読み書きができなかったアスカだったが、渡羽に教わった今ではすらすらと難しい文章も書けるようになった。
 勉強が苦手だというアスカだが、頭が悪いというわけではないようだ。
 ティアラも「飲み込みは早いのですが、努力するのが嫌いで、身につけた力を生かすのが下手なんですよねぇ」と笑っていた。
 その後、聞きつけたアスカに「別にいいでしょ! 勉強できなくたって死ぬわけじゃないんだからっ」と怒鳴られていたが。
 母にもすっかり気に入られ、時々、まるで本当の親娘のように見える。
 魔法修行の方はと言うと…………あまり進歩していないようである。
 そうして渡羽もアスカも、日々の生活を通して少しずつ、異性として互いを意識するようになっていた。
 それは淡い恋の花。ゆっくりと、けれど確実に、つぼみは開き始めている。
 

 真穂(さなほ)市立・戸尾ヶ崎(とおがさき)中学。渡羽の通う中学校である。
 そこそこ古い学校で、校舎や学校の備品にも傷や汚れが目立つ。
 明日から夏休みで、皆、神妙な顔をして担任教師の話を聞いているが、内心はうれしくてたまらない。
 帰りのHRが終わり、渡羽が帰る用意をしていると、前触れなく軽いバックチョークをかけられた。
「あーすか!」
「うわぁっ」
「ようやく終わったなー。明日っから夏休み! 待望の素晴らしき夏の休暇!
 学生やっててよかったと思えるのはこの瞬間だけだぜ」
 渡羽にバックチョークをかけているのは、少し浅黒い肌で、金髪に紫の瞳の男子生徒。額にはバンダナを巻いている。
 彼はバルカン(あだ名)、渡羽の旧友である。
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