マジカル☆ラビリンス

□5th
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 その日の午後七時。渡羽は、修羅坂に向かった。
 あたしも行くと言うアスカに、渡羽は一人で大丈夫だと言って聞かせた。
 修羅坂につくと、シンは修羅坂の上で腕組みをし、仁王立ちしていた。夏の熱気をはらんだ風が、二人の間を吹き抜ける。
「ふふふふふ。怖じ気づかずに来たか。まあ、そうでなければ、張り合いがないがな」
「一体なんだと言うんですか、あなたは。アスカにしつこくつきまとったりして。しかも、あんな挑戦状まで送ってくるなんて」
 シンは渡羽を見下ろし、笑みを消した。
「君だって大事な花に害虫がついていたら、排除しようとするだろう? それと同じだ。
 アスカ姫に近づく害虫は排除する。今までそうしてきたのだ。たとえ人間であろうと、容赦しないぞ!」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ! 俺は別にそんなつもりは…」
「問答無用! 行くぞ!」
 シンは地を蹴り、空中に立った。渡羽に右手を向け、呪文詠唱を始める。
「ビフォー=ワイズエッジエルク・リ=パナト=フィーロ=ビュッセーエルク!」
 すさまじい風が刃となり、渡羽に襲い掛かる! 渡羽は悲鳴を上げた。
「魔法を使うなんて卑怯ですよ! 俺は丸腰なのに…うわっ、眼鏡が!」
 強風によって、渡羽の眼鏡が飛ばされる。
「果たして、この風刃の嵐から逃げ切れるかな!?」
 にやりと笑うシン。渡羽は四方八方から襲いかかってくる風刃を必死でよける。そうしなければ、下手をすれば死ぬ!
 その様子を見ていたシンは、ふと違和感を感じた。
(…ん? なんだ、これは)
 ほんの微かだが、魔法力を感じる。自分のものでも、アスカ姫やティアラのものでもない、別の魔法力。
 しかし、この町に――この人間界に、今のところ自分たち以外の魔法使いは来ていないハズだ。
 もしもいるなら、遠い国でない限り魔法力を感じ取れる。
 だが、今まで自分たち以外の魔法力を感じたことはないし、今感じている魔法力はすぐ近くからだ。
 強まったり弱まったりと不安定だが、確かに感じる。
(いったいどこから……)
 渡羽を目で追いながら、シンはまさかと思った。
「なんでこんなことに…! 俺が何をしたって言うんだ!」
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