マジカル☆ラビリンス
□6th
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ミーンミンミンミンミンミン…
どこかでセミという虫が鳴いている。あれは夏になると聞こえるらしい。
ミーンミンミンミンミンミン……
むわっとした熱気が部屋にこもっている。窓は開けているが、あまり風がないし、セミの声がうるさい。
ミーンミンミンミンミンミン………
ただでさえ暑いのに、あれの鳴き声を聞くと、余計暑く感じる。魔力でもあるのだろうか?
ミーンミンミンミンミンミン… ミーンミンミンミンミンミン…… ミーンミンミンミ…
「あ――――っ、もううるさーい!」
アスカはがばっと起き上がって窓に駆け寄った。
「少しは静かにしなさいよ! ミンミンミンミンうるさいし、暑いし、のど渇いたし、暑いし、夏なんてもうイヤーっ!」
どこかにいるであろうセミに向かってアスカは声を張り上げた。
道を歩いていた通りすがりの人が汗を拭きながら、アスカの絶叫に首肯して同意した。
今のアスカの絶叫は、誰もが心の中で思っている本音だった。
アイスグリーンの瞳と、ヒヤシンス色のロングヘアー。今は暑いのでポニーテールにしているが、普段は下ろしている。
アスカ――正式名はアスフェリカ・グランジェ・ウィル=マジカリア。魔法の国の王女である。
彼女は十六歳の誕生日、魔法界からこの人間界へとやってきた。
アスカの住むマジカリア国は女王制で、マジカリア王家に生まれた女児は十六歳を迎えると、女王試験を受ける。
その女王試験は、人間界で主人(あるじ)とする人間を一人選び、主人(あるじ)の願いを三つ叶えること。
この試験では人選の良さ、判断力、魔法力の強さなどを試される。
人間を選ぶと言っても、適当に選ぶのでは意味がない。魔法の存在を知り、その力を悪用する者、欲深い者などを選ぶようなら、失格となる。
これは女王となった時、より良い臣を選べるかどうかに繋がる。悪しき臣はいらぬ争いの種を持ち込むことがあるからだ。
そして、良い人間を選んだとしても、なんでもかんでも叶えればよいわけではない。
魔法を使わずとも手に入れられるもの、努力すれば叶うようなことを、わざわざ魔法で叶える必要はない。
何がよくて何がいけないのか、それを判断し決断することは、国を統治していく中で大きな意味を持つ。