マジカル☆ラビリンス

□8th
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 四人はプールの真ん中に立っていて流れをせき止めていたため監視員に怒られたので、昼時ということもあって、プールサイドのレストランにやってきた。
 丸テーブルの席に案内され、一通りオーダーを済ませると、双方の知り合いである渡羽が紹介することになった。
「それじゃあ改めて紹介するよ。二人は俺のクラスメートで、こっちは高尾明衣子さん」
 手で示されて、明衣子はアスカにぺこっと頭を下げた。
「は、初めまして」
「うん、はじめまして」
「で、こっちが――」
 続けて渡羽がバルカンを紹介しようとすると、顔を赤くしたバルカンが自ら名乗った。
「坂月将之介(さかづきしょうのすけ)、十五歳! バルカンと呼んでください!」
「ばるかん?」
「ハイ!!」
 小首を傾げるアスカに、バルカンはこの上ない笑顔で頷いた。
 こんなに笑顔のバルカンは、小学校来のつき合いである渡羽も見たことがない。なんだか不気味だ。
「昔っからのアダ名なんすよー」
 由来は幼稚園の頃に流行っていた、特撮ヒーローものの主人公の名前だ。
 そのヒーローに憧れ、よく真似をしていたので、そう呼ばれるようになった。
「そっか。じゃあそう呼ぶね」
 ニコッと笑うアスカに、バルカンはにへらっと頬をゆるめた。本当に不気味だ。
「えーと、それでこっちが…」
 本名を言うべきかためらう渡羽を察して、アスカは「あ、自分で言うよ」と後を引き継いだ。
「あたしはアスフェリカ・グランジェ。十六歳。長いから、普段はアスカって呼ばれてるの」
「え、あすか?」
「素敵なお名前ですね!」
 明衣子は目を丸くしたが、バルカンはへらへら顔で気にも留めていない。
 不気味なほど笑顔のバルカンに、渡羽はふと、さっきプールから上がる時に見たものを思い出した。それはバルカンの水着。
 彼が穿(は)いている水着は、昨日母親が最初に持ってきた、あの真っ赤な海パンだったのだ。後ろには野太い『漢』の文字。
 もしも、万が一…いや、百万が一、あの海パンを買い、今日穿いていたら……バルカンとおそろい!! 考えるだに恐ろしい。
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