光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第4廻
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「なんだ、はっきりしないな。俺はそういった中途半端なことは嫌いなんだが」
 冷ややかな口調で言い、響はすたすたと先を行く。
 ころんはすぐに後を追い、少年の隣に追いつくと「ごめんなさい…」と謝った。
「そうやって悪いことをしたわけでもないのに、謝られるのも好きじゃない」
「それはわかってるんだけど…なんか碧君に言われると、悪いことしてなくても謝っちゃうのよ。そういう気持ちにさせられるっていうか……」
「俺はさせたくてさせているわけじゃないけどな」
 その一言で会話は途切れた。返す言葉がない。ころんはただうなだれるしかなかった。しばらくして、
「…悪かった」
 響が口を開いた。
「お前にそんな顔をさせたくて言ったわけじゃないんだ」
 うなだれるころんの表情を見て、響は――表情はほとんど変わっていないが――暗い声で言った。
 ころんはあわてて顔を上げて、手を左右に振った。
「ちがうわっ。私が悪いの! 私が変な言い方をしたから。別に落ち込んだわけじゃないから気にしないで」
 にっこりと笑うころん。響は表情には出さなかったがほっとした。
 響がああいう言い方をするのは、人付き合いが苦手で不器用なだけで、本当は優しいということを知っている。
「それはそれとして、なんで高天は健康診断が嫌なんだ?」
 下駄箱から靴を出して響が訊く。ころんは靴の先をとんとんと地面で叩いて整えながら、
「え…えーと……あっ、そうそう、身体測定があるでしょ? 体重とか気になるから。増えてたら困るなーって。だから」
「そういうものなのか」
「ころんちゃんも体重気になるのーっ?」
「きやああっ!?」
 突如、眼前にかわいらしい顔が下から飛び上がってきたので、ころんは大きくのけぞった。
「あれ? ゴメン、おどかしちゃった?」
「ななな、七海君っ?」
「佑輔。いきなり現われるな。高天(あいて)の心臓に悪いだろ」
 響がこつん、と突如現われた女子生徒…ではなく、男子生徒の頭を、げんこつの裏で軽く叩いた。
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