光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第5廻
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 生徒の個人データは普通に閲覧できるものではないのだが、佑輔はコンピューターに侵入してこれらの情報を得たのだ。
 佑輔の黒い手帳には、学園内の多数の生徒や教師の情報が収められている。
 それらは裏ルートで入手した基本情報に加え、佑輔が地道に聞き込みなどで得た情報でもある。
「あと、家には住込みのお手伝いさんがいて、紗雪ちゃんとはいとこ同士だって。
 自己紹介の時にも言ってたけど、香春原(かわらばら)女子中出身。あのお嬢様学校だよ、この辺りの中学じゃ結構なレベルなのに、スゴイねぇ」
 にこやかに笑う佑輔に、相模は苦笑した。
「すごいのはお前の方だろ、幼学、小学、中学の七年間連続で、全国模試一位を取り続けてるんだから」
「まあ、ボクは他の人とは頭の出来がちがいますから」
 何気なく言った佑輔の言葉に、相模は笑みを消した。
「――それは凡人に対する皮肉ですか?」
 わざと丁寧に言ってやる。佑輔は軽く瞠目してから、自虐的な笑みを浮かべた。
「普通の人間(ひと)とは出来がちがうというハナシですよ」
 そう言うと、佑輔はうなだれた。
「……わかってるクセに…イジワルだなぁ、相模クン」
 弱々しく呟く佑輔の頭を撫で、相模は慰めるように静かな声で言った。
「お前がバカなこと言うからだ。…もう“他の奴とは違う”とか言うなよ。“普通の人間とは違う”なんて、自分で自分を傷つけるようなこと、言うな」
「……うん」
 こくんと小さく頷くと、佑輔は手帳を閉じた。
「これ以上は調べられなかった。聞き込みしようにも、この学園に入る前のころんちゃんを知ってる人いないし、唯一知っていそうなのはあの紗雪って娘(こ)だけど…」
 佑輔は言葉を切った。あの娘との接触は難しい。常に調査対象(ころん)のそばにいるし、ガードが堅そうだ。
 紗雪についてはまだ調査をしていないので、生徒データだけの基本情報しかない。
 いずれ調査をするべきだろう。もしかしたらそこから、ころんの情報も得られるかもしれない。
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