光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第6廻
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 が、しかし、ある工学者によって完全自律型が実現した。
 それが世界初の完全自律型ヒューマノイド――エトワール。   
「碧がヒューマノイドの新星、エトワールの製作者の息子ねぇ」
 名字を聞いた時からもしやとは思っていたが、本当にそうだったとは。
 碧夫妻と言えばその分野では有名人。幾度なくテレビや雑誌で取り上げられている。
 そっちに興味のない紗雪でも、名前くらいは知っているくらいだ。
 そんな有名人の縁者がこんな近くにいようとは。世間は狭いもんだな、と思いつつ紗雪は門の間から中を覗き込んだ。
「で、中入らないのか?」
「は、入るわよ! でも、勇気が出なくて……」
「この程度で何言ってんだか」
 紗雪はこれより大きな敷地の家を知っている。まあ、この家もここ周辺では一番大きな家かもしれないが。
「だってこんなに広いし、門だって立派だし。こ、こういうのってやっぱり自動だったりするのかしら」
「さあ」
 小さく肩をすくめてみせる紗雪。ころんは逡巡したのち、呼び鈴に手を伸ばした。
 ♪ピッポーン♪
 ころんは高鳴る胸を押さえ、響が出るのを待った。
 ドキドキドキ ドキドキドキ
《はい》
「ぴっ」
 緊張をほぐすために、手のひらに「人」の字を書こうとしていた時に、インターホンから響の声がして、ころんは硬直した。
「ああああのっ! 高天っころんですっ」
《ああ、そのまま入ってくれて構わなかったんだが》
「え!? だって、なんかこういう雰囲気だから、マンガとかでよくあるお金持ちの家みたいに、インターホン使って開けてもらうものなんじゃ……」
《その門は手動だ》
「………あ、そぉですか」
 自分の大ボケな勘違いに、ころんは恥ずかしくなって俯いた。視界の隅で、紗雪が肩を震わせているのが目に入った。
(紗雪ってば知ってたのね〜!? 教えてくれればいいのに!)
 笑うなんてひどい。そういえば、紗雪が一緒だということを伝えなければ。
「あ、碧君。あのね、今日はイトコも一緒なんだけどいいかしら?」
《イトコ?》
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