光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第7廻
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 うなだれ、テーブルに手をついて懇願する響。相模はにやりと笑い、
「ならもう俺のやることに口出しするなよ? 余計な真似したら――解ってるな?」
「……分かった」
「それじゃあ、俺も弟共(あいつら)と遊んでくるかな」
 相模はリビングを出ていく。テーブルに手をついたまま、響は小さく声を漏らした。
「…麗美……」
 たとえどんな犠牲を払ってでも、お前だけは。


 ぼむっ
「どぅわっ」
 子供部屋のドアを開けた途端に、ビニールボールが飛んできた。相模は紙一重で避け、ボールを受け止める。
「あー、さがみだー」
 ボールを追いかけて、蓮が走ってくる。
 相模はボールを蓮の頭にボン、と乗せて、女の子なら思わず、どきっとしてしまいそうな笑顔を浮かべる。
「やあ、蓮君。久し振りだな。元気そうで何より。ところで――」
 そこで言葉を切ると、相模はずいっと蓮に顔を近づけ、
「いい加減呼び捨てにするのは、や・め・ろ」
 と、すごむ。蓮はむっと眉根を寄せると、頭の上のボールをつかみ、そのまま相模の顔にぶつける。
「ふぶっ!」
 顔を押さえてよろめく相模に、べーっとあかんベえをして、蓮は跳ね返ったボールを追いかけながら、ころんたちのところへ走っていく。
「ってー……。蓮の奴、いつもふざけやがって……」
 こめかみに青筋を立て、相模は鼻の頭をさすりつつ、一人、ボール遊びに加わっていない稟の隣に座った。
「相変わらず生意気だな、お前の弟君は」
「…………」
「もしもーし、聞いてますかー」
 本に視線を落したまま、稟は抑揚に乏しい声で問いかけた。
「……相模お兄ちゃん、響お兄ちゃん、イジメに来たの?」
「さて、それはどうでしょう」
「それとも……あのお姉ちゃん、イジメに来たの?」
 誰を指しているのかは訊かなくとも分かる。的を射た言葉に、相模は「さあ、どうだろうな」と小さく冷笑した。


 それから昼の時間まで、ころんは子供たちの相手をさせられた。ボール遊びに飽きれば、ジャングルジムやすべり台。
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