光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第8廻
3ページ/12ページ

 だが、ころんの力が強すぎる。抑えきれない。
 ついには、スレイドの魔力の膜さえ打ち破り、光が溢れた。


 眩しい光。相模は顔を覆った。
「な、なんだよ、この光!」
 思わず“声魅(こえみ)”も解いてしまった。ころんから発せられる、淡いピンクの光。いったい、何が起きた?
「……あなたは…誰?」
 予期していたものとは違う言葉に、相模は目を瞠る。
 ころんは焦点の定まらない目で相模の目をまっすぐにとらえている。
「…その瞳を私は知っている。よく似た瞳を」
「…何言ってる…、!」
 ドクン、と相模の中でも何かが脈打つ。それはころんのものよりも激しく、速い。
 自分の奥にあるものが揺り起こされるような感覚。眩暈(めまい)がする。
 ころんは確かに“声魅”にかかっている、はずだ。なのに、なぜ支配できない。
 忌々しげに相模は奥歯を噛みしめた。
 ころんは相模の目を見つめたまま、悲しげに瞳を揺らした。
「あなたの瞳は、闇に染まりかけている……。何がそんなに、あなたの心を氷(こお)らせているの?」
「!!」
 相模は大きく目を見開いた。ころんの表情、言葉。記憶の奥のさらに奥で、見たことがある。
 ずっと昔、いつか、どこかで。
 ころんではない誰か/ころんに似ている。
 知らない/知っている。
 懐かしい、面影。魂の最奥で、もう一度何かが脈打った。
 それまで浮かんでいた苛立ちや憎しみが消え、新しい感情(もの)が沸き起こってくる。
 そう。あの日、あの公園で感じた……この、胸を焦がすような熱情。あの時……蓋をした想い。
「…ころ…ん……」
 かすれた呟きが相模の口から漏れる。熱いものが込み上げてきて、相模の瞳が切なげに細まった。
 胸を衝く痛いほどの懐かしさ。それがどうしてなのか相模には分からなかった。ただ、ただ無性に――
 相模は激情にまかせてころんを抱き寄せようとした。その手がころんに触れる直前。
「絶(ゼツ)!!」
 鋭い声が飛んできて、ころんの意識を支配していた何かと、相模の“声魅”の波動が断ち切られる。ころんの膝がかくりと折れた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ