光と闇の輪廻(サンサーラ)

□第1廻
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「お嬢様の制服姿を見たら、改めてそう思ったんです。
 だって、あれから八年ってことですよ? 奥様が亡くなられてから」
 食事の手が止まる。シェルティナは少女――高天(たかま)ころんの母親に創られた神使(スタンリー)だ。
 ころんの母は、天界の長・天帝の娘で、斂子(フィリン)という特殊な女神だったが、八年前に病で他界している。
 己の死期を悟っていた彼女は、残される家族のためにシェルティナを創ったのだ。
「…そうね。もう八年なのね。まだそんなに経ってないと思ってたけど、結構経つのね。
 時間をあまり感じないのは、シェルティナのおかげかしら」
 微笑んで食事を再開する。シェルティナがいてくれたおかげで、父も自分も早くに立ち直れた。
 傷心の自分たちの代わりに、彼女が家事をこなしてくれた。母からの最期の贈り物。
「ところで、今度の学校は男女共学なんですよね?
 お嬢様のお体のこともありますし、大丈夫でしょうか…今まで同様、共学でなくてもよかったのでは?」
 クロワッサンをつまみながらシェルティナが言う。
 今日からころんが通う、王立藍泉桜咲(あいずみおうさか)クリエイト学園――通称・クリ学の高等部には、共学部と男子部と女子部がある。
 ころんは中学校に入るまでは家で家庭教師がつけられていて、中学校は女子校だった。男子との共学なんて幼学校以来なのだ。
「大丈夫よ。ちゃんと気をつけるし、今更変えられないもの。パパもなんとか許してくれたしね」
 父親にはかなり反対されたが、最後はころんの粘り勝ちだった。
 今でもたぶん、本心では認めていないのだろうけれど。
 今回、ころんが女子部ではなく共学部を選んだのは、共学に憧れていたこともあるが、もう一つ理由がある。
(どうしても共学部がよかったんだもの。だって、あそこには…)
 ピンポーン
「あら、誰か来ましたね。きっと、さゆちゃんですよ」
「えっ、あっ!」
 玄関のチャイムが鳴り、シェルティナが足早に出て行く。
 ころんははっと壁の時計を見て、まずいと顔色を変えた。急いで朝食をかき込む。
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