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□ダイゴさんの大誤算
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二人は凍りついた。




ダイゴさんの大誤算




その日、マツブサはハルカとミナモデパートに買い物に来ていた。

「買い物なんて超ひさしぶりかも!」

「ああ、疲れた。家に帰りたい」

「何言ってるのよ、来たばっかりじゃない!」

「人の多いところは好きじゃないんだ…大体今日は家でゆっくりする予定だったのに」

「なにいってるの、予定っていつもゆっくりしてるじゃない」

「いや、あれは違う種類のゆっくりなんだ。私のゆっくりは日によって違うんだ(力説)」

「もうわけわかんないし! って、どこ行くのマツブサさん」

「ワインフェア…」

「だめよ! お酒もいつも飲んでるじゃない、呑みすぎ!」

「いいじゃないか、年寄りの楽しみを奪わんでくれ」

「何言ってるのまだ三十歳じゃない!」

「違う、29だ!」

ぎゃいぎゃいと騒いでいる二人。そこに、一人の男が通りがかった。

「やあ、ハルカちゃんじゃないか」

「あ、大誤算、じゃなくてダイゴさん!」

「?」

ダイゴはにこにこと笑った。

「こんにちは。買い物かい?」

「はい、そうですマツブサさんと」

「ああ、えーっと確かきみはデボンの…」

「はい、デボンコーポレーションのツワブキの息子のダイゴです。父がお世話になりました。」

「いや、こちらこそいい対談だった」

「なになに?知り合いなの?」とハルカが聞いた。

「うちの父は化石採集が趣味でね。まえにマツブサさんにお伺いを立てたことがあったのさ。」

「へえーそうなんだ。そういえばマツブサさんって学者だったね」

「そういえばってなんだ。」


ダイゴはハルカに向き合った。

「そういえば、もうすぐクリスマスだね。なにかプレゼントを買ってあげようか」

「えっ、いいんですか?でも…いいですよ、悪いし」

ハルカはちらりとマツブサをみた。
マツブサは不可解な顔をしていった。

「いいんじゃないか、買ってもらえば」

「でも」

「遠慮しなくてもいいんだよハルカちゃん。僕はこう見ても御曹司だからね!」

ハハっとダイゴは笑った。そしてマツブサに向き合った。

「いいですよね、マツブサさん」

「? ああ、いいんじゃないか?」

「本当ですか?」

ハルカはまだ遠慮がちだ。マツブサは彼女の肩を押してやった。

「ほら、いってこい。私は地下の食品売り場にいるから」

「だめ!またワイン買う気でしょ、マツブサさんも一緒に服選んで!」

「はあ!?」

というわけで、ハルカはマツブサをひっぱってエスカレーターを登り始めた。

その姿を、ダイゴが冷たい瞳で見ていた。
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