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□さえためとあたまで
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なにもかんがえていなかった


病室


「患者番号B2573は…」
真っ白い部屋でずっと座っているだけ
たまに数式や絵をかく
白い服を着た誰かがそれを持って行く
シロい粒が減ったり増えたりする
それだけ。なんにもかんがえなくてよかった


「変わったことはあったか」
「いいえ、なにもありません」
たまに赤い人がやってきて僕に親しげに、そして熱心に話しかけてくる
誰も知らないのに
誰かの面影を感じる


病院内
テラス

「あの子、なにも話さないんだ」
マツブサは髪をいじりながら言った。

「父親はなにしてるんだ」
「妹があの子を産む前にどこかへいってしまったよ」
アオギリは顔をしかめた
「連絡つかないんだよ」マツブサは疲れたような白い顔を、心労でさらに白くしていた。
「なんの情報もないんだ」
アオギリはつぶやいた
「あの子はなんで数式ばかりを書くんだろう」
「そしてなぜこんな絵を書くんだろうな」
マツブサは持っていた紙を机に置いた
真っ黒に塗りつぶされたなにかが 人を潰している絵だった。
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