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□目と目があった瞬間Z
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ボブはしばらく考えていたが、にやりとしてバートを見た。
彼はさらにバートに近づき、顎を取って目を見た。少年はさっと目をそらした。
「どうしてそんなことをした?」
「それは……」
「教えてあげよう、それは君が私を好きになったからだ」
「……」
「否定しないのかね」
「アンタはどうなのさ、俺のこと殺したいの?愛したいの?」
「両方、だな。殺したいほど憎いと同時に独占したいほど君が愛しいのだよ。まあ子どもにはわからんだろう」
「おれはもう子供じゃない!」
「それでは試してみるかね? 自分が子供かどうか……」
ボブはバートに顔を近づけた。バートはそれをやんわりと押し返した
「ところで聞くけどさ、セルマおばさんと寝たとき、どんな気分だった」
「藪から棒になんだ」
「どうなのさ?気持ちよかったの?プライド捨ててまで実行したのに失敗した気分はどう」
少年は今度はニヒルな笑みで言った
「もしや……やはり酒臭いな」
見ると、机の隅に赤色の液体が入ったコップがあった
「裸にはならないよ」
「そうしてくれ。理性を抑えられる自身がない」
バートはワインの瓶を逆さにして勢いよくワインをついだ。ボブが勢い余って机に飛び散ったそれを
もったいないと舐めようと手を伸ばすと、バートがそれをつかんだ。
「なんだ」
「ねえ、ボブ。おれを愛してるならさ、もう二度と他の奴は相手にしないって約束してよ」
「それは、肯定ととっていいのか」
「違う、違うよ。あんたなんにもわかってない。これは遺言なの」
「遺言?」
「そう。遺言。アンタがおれを殺すから、その遺言」
バートはさらりと言ってのけた。ボブは目を見張った。
「あのね、アンタはいつかきっと俺を殺すよ、いつかね。わかるんだ」
「正夢でも見たのか」
「違うけどさ、でも、アンタが今おれを殺してもずっと約束を守れれば、おれは永久にアンタのものだよ。たとえ地獄に落ちてもね」
バートはワイングラスを傾け、一気に半分以上飲んだ。ボブは一瞬困惑し、一瞬迷い、一瞬で決断した。
「バート・シンプソン」
「なに」
「悪いがそれは約束できない」
「どうしてさ!」
「お前は忘れているだろうが、私の目的はお前に復讐し、苦しみを味わわせることだ」
「……ああ、サイドショーボブ」
ボブは跪き、バートの手を取って甲にキスをした。そして小さな体を抱き上げて、静かにベッドに下ろした。
「さあ教えておくれ、どうして私に殺されたかったのだね」
「こないだゴーストって映画見たんだ、それで訓練すれば幽霊でも物動かせるって!かっこいいじゃん!」
悪戯しほうだい!
ボブはため息をついた。この子がまだ十歳の少年だと言うことをすっかり忘れていた。
バートは眠そうに目をこすっていた。ボブが引き寄せると、少年は簡単に腕の中におさまった。
昔なら、こんな無防備なことをしようものならすぐにでも絞め殺していただろう。だが今は、ただ憎いから殺すのではない。
殺すなら愛しいから殺すのだろうと、ボブはぼんやり思った。
「なんで今日は酔ってたのか聞かないの?」
「聞いてほしいのか」
「あのね、あんたが来るって知って、怖さと期待でおかしくなりそうだったから」
「……」
ボブは優しくバートの頭をなでた。少年の目はとろんと落ちてきた
「あ……だめだおれまだ眠れないよ……ボブが寝るのをディフェンスしなきゃ……」
「私はとっくに妨害されているよ。だからもう眠りなさい」
「……ねえ、サイドショーボブ」
「ボブと呼んでおくれ、バート」
「ボブ。俺のこと抱きたい?」「いいのk」「だめー!」
バートはシーツをかぶってこちらに背を向けてしまった。ボブはため息をついてトイレに入った。
結局ほとんど眠れなかったが、最後には腕の中に入ってきたバートを見ているだけで、彼は幸せだった。

翌朝、バートが目覚めるとボブの姿は消えていた。机を見ると、机の上に一言書置きがあった。
バートは深いため息をついた。そして彼が倒れずに姿を隠せることを祈った。
そしてイタリアってどんなところなんだろう、とも。
そう思っているうちに扉が開いた。驚く間もなく警察がピストルを構えて入ってくる
「そこまでだサイドショーボブ!!」
また面倒くさいことになりそうだな。ためいきをついたバートの口元は微笑していた。




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言い訳はしない
調子に乗ったことは自覚している
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